自己探求
本当の貴方はどれですか


 飯塚 毅 著
(目次)

序章 私の原風景
 ひとの生き方
 父と母の愛の重さ
 弱者からの脱出
 犯さるるも校せず
 父母恩重経のこと
 痴迷無知の人
 
第2章 我が師の教え
 正覚無覚 真空不空
 至道は無難
 植木老師の眼
 人間最高のイキザマ
 自己の純粋化を徹底せよ
 常に進道を求める
 
第3章 心の原点
(1)真実の自己を求めて
  本当の貴方はどれですか
  心の動き
  錯覚
  自己探求
  自己探求の仕方
  無念無想
  二念を継がず
  克己
  人の性格は変えられるか
  空の確証体験
  現実認識論の2つのタイプ
  空の確証体験が運命形成能力を内包する
  先験的意識のこと
  看取せよ、看取せよ
(2)運命を分ける選択
  人生の運命を分ける選択
  破局は一瞬の誤断で生ずる
  自我の妥協か滅却か
  自我の妥協か滅却か(再論)
  会社に勤めて必ず落第する方法の原理
(3)真の洞察力を身につけるには
  直観力の培養に関する自問と自答
  洞察力の入手
  洞察力ヘの道
  洞察力体得への2つの要件
  洞察力体得への最短距離
  洞察力を越えて
  最高の生きざまの3条件
  心を耕す
 
第4章 仏教の智慧
 応に住む所無くして、其の心を生ずべし
 六祖恵能のこと
 阿含経のこと
 心肝を徹見した盤珪
 恐怖感を考える
 瞑想の鍛練のこと
 
終章 力の限り、ひと時を咲く
 利己心の真相
 自制心の練磨が要点だ
 山を見て、山を見ず
 業苦の人生に耐える者を拝む
 殺せ殺せ 己を殺せ 殺し果てて 何も無きとき 人の師となれ
 君は真の自利利他で生きているか


(はじめに)

 あなたも御承知のように人生というものは1回きりのもので、しかもせいぜい100か100年以下の長さしかありません。この短い人生の中を、自分はどう生きたら良いのかは、どなたにとっても重大問題だろうと思います。その重大問題に的をしぼって、あなたの考え方の参考にでもなれば、と願って、TKCの社内報『とこしえ』に毎月発表してきた私の考えを集めて1冊にしたのが本書です。
 日本禅の中興の祖といわれる白隠禅師は、その著書『薮柑子』という本を亡くなった母の50年遠忌の供養のために1日半で書き上げたと告白していますが、その中で出家の決意をしたくだりのところで、「然るを況んや我輩塵芥の微?、鄙賤の残質をや」(そうであるのに、まして、自分のような塵芥のような微賤な者が、どうして出家せずにいられようか)と、文字通りの謙虚さで自分を表現しています。この徹底した謙虚さは最澄・伝教大師も同じですね。彼は37歳の時、廷暦4年7月、大僧という国家資格を獲得した後で突如、比叡山に登って樹下石上の修行体制に入ったのですが、その時に作った願文があります。この中で彼は「ここにおいて、愚が中の極愚、狂が中の極狂、塵禿の有情、底下の最澄、上は諸仏に違し、中は皇法に背き、下は孝礼を闕けり」と、徹底した謙虚さと自己批判に立って、短い願文を書いています。両雄とも、これが正直な本音だったのですね。深く学ぶべきだと、私は、思っているんです。

平成6年5月吉日
飯塚 毅

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