2015年(平成27年)の被相続人のうち相続税の課税対象となった人の割合はバブル期を上回り、現行課税方式の下では過去最高(2016年も過去最高を更新)となりました。「課税価格階級1億円超」の被相続人は前年からの3%増加に対し、「課税価格階級1億円以下」は2014年(平成26年)(相続税の基礎控除引下げ前)の4倍と格段に増加し、課税対象者の裾野が広がることによって影響は大きくなっています。また、課税割合が増加した地域は、大都市圏のみならず地方圏でも増えており、総じて相続税改正の影響は全国に広がっています。 これまでごく一部の人しか対象にならなかった相続税も、課税対象者の裾野が広がることでより多くの人が意識するようになってきたと見られ、また、人口動態上、死亡者数の増加が続き相続が身近に起きていることで、相続及び相続税への関心が高まっています。 さらに、1980年(昭和55年)に改正されて以来、大きな見直しがされてこなかった民法の相続に関する規定(相続法)が、高齢社会の実情を反映するために、「民法及び家事事件手続法の一部を改正する法律」及び「法務局における遺言書の保管等に関する法律」によって改正(2018年(平成30年)7月6日に可決・成立)されました。 民法(相続法)の改正のうち、自筆証書遺言の方式緩和など遺言に関する改正は、遺言書が相続をめぐる紛争を防止することに役立つとの観点から行われました。また、自筆証書遺言書の活用に当たって問題とされていた隠匿、改ざん、検認などの事項については、自筆証書遺言書を法務局で保管する制度が創設されることによって問題点の解消が図られることになりました。 そこで、本書は、遺言実務に関する民法改正の概要と、相続対策や終活を考える場合、避けて通ることができない「遺言書の書き方」や、「遺言書の有無による相続対策への影響」などについて、具体的に解説しています。はじめに
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