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24A社では、創業者が形式的に社長を譲りましたが、実際には会長として経営の意思決定を全て行っており、取引先、金融機関などからもそのように見られていました。相続後は社長に対外的な信用がなく、取引条件や資金調達に支障が生じました。早めの承継対策が必要です。創業社長に多いケースですが、高齢になり後継者に社長を譲り自らは会長に就任したのに、大きな設備投資や取引先との重要案件、役員人事などの意思決定の権限を手放さない経営者が見受けられます。会社経営の能力が高く順調に経営成績を上げており、その能力の高さは誰もが認めるところですが、高齢にもかかわらず自らが重要な意思決定を行っているため、社内外の誰もが会長に万一のことがあった場合にこの会社はどうなるのかと心配しています。社長の最後の仕事は後継者育成ですが、これを怠っているということです。後継者育成に力を尽くさず、社内外に認知される後継者がいない段階で、実質的な経営者に相続が発生すると、信用不安が発生するおそれが高くなります。後継者の経営力が未知数である上に、会社の経営成績が不振で、財務内容が悪化している状況で、こうしたことが起こると、取引先に与信枠を縮小されたり、金融機関に運転資金の融資枠を絞られたりすることもあります。長い時間をかけてしっかり後継者を育成し、その過程で内外に後継者候補であることを周知し、権限を委譲し、後継者候補が徐々に取引先や金融機関などの信用を得ていく【第1部】 中小企業の事業承継の現状と課題■ 社長の最後の仕事は後継者育成■ 後継者育成と会社の内外への周知経営の実権を手放さなかったケース

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