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図表1−5 高齢者の心身の特性① いくつかの病気を併せもっている  高血圧、糖尿病、慢性肝炎などの老人の病気は、心身機能の全体的な低下から生じてくるものが多く、高齢者はいくつかの病気を併せもっていることが多いといえる。また、肝臓をはじめとした組織の機能が低下しているので、若い人に比べて少ない量の薬でも反応が起こり、副作用が生じやすいといえる。このため、高齢者の場合は、個々の病気に目を向け、薬物治療に偏りすぎることなく、生活指導を中心に心身機能を全体として維持、回復させることが大切である。② 完全には治らない病気が多く、長期間の療養が必要  高血圧をはじめ高齢者の病気の多くは、完全には治すことのできない病気であるので、療養期間も長くなる。このため、短期間治療に専念すればよい若い人とは異なり、高齢者の場合は、状況さえ整えば、なるべく家庭で個人の生活と切り離されない形で療養できることが大切である。③ 病気の進行が緩やか   肺炎などの感染症を除けば、高齢者は若い人に比べて病気の進行が遅いといえる。このため、検査についても同一検査を頻繁に行う必要性は若い人に比べて少ないといえる。一方、高齢者ニーズの把握においては、高齢者の心身の特性を理解しておく必要があります。高齢者の心身の特性としては図表1−5のような点があげられます。ニーズは、一般的に要求、欲求、必要といった意味で使われますが、通常、顕在化したものであり、潜在化の状態にある場合はウォンツが使われます。顕在化しているニーズの特徴は、医療・介護ニーズが中心で、大きなウエイトを占めます。その他に、経済的ニーズ、社会参加ニーズなどがあります。このような高齢者ニーズを評価・判断するときは、マクロ的には年代別、地域性などを基に、ミクロ的には個々の高齢者の年齢、性、世帯状況、経済状況、心身の状況などを判断し、最終的な介護サービスを提供していくことになります。そこでは、生活の質(QOL:Quality of Life)を重視して、多様な高齢者ニーズに対応していかなければなりません。世界保健機関(WHO)は1984年、「高齢者の健康は、生死や疾病の有無ではなく、生活機能の自立の度合いで判断すべきである」とし、さらに「生活機能は多面的であるため、評価に際しては日常生活動作能力、精神状態、身体的健康、社会的健康、経済的健康などの各側面について、包括的に評価すべきである」と、高齢者の健康の定義を生活機能における自立の度合いで見るように転換しました。これが生活の質(QOL)を重視した内容であるといわれています。7第1章 介護事業の経営

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