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i 本書の書名『相続税の申告と書面添付─安心の相続を実現するために─』は、相続税申告をする納税者にとっての大きな安心とは、「実地調査がないこと」であり、そのためにも、相続人と税理士との信頼関係構築がベースとなる書面添付を行うことが、形式面でも実質面でも正しい相続税申告書の作成・提出につながるとの基本的な考え方を表しています。 今日、法人税申告において、税理士による「書面添付」の件数は、年間約20万件(平成25年度)に達しており、これは税理士が関与する全申告件数の約8%に相当します。 この「書面添付制度」(「税理士法第33条の2に規定する書面添付制度」)とは、税理士が税務申告書を作成する過程で、どの程度まで関与したかを明らかにする制度で、具体的には、「計算し、整理し、又は相談に応じた事項」を記載した書面を、税務申告書に添付する制度を指します。特に法人税の税務申告書への書面添付について、日本の会計学界の最高権威、武田隆二元神戸大学教授は、「税理士による証明行為であり、決算書類の実質的適正性を保証するもの」と述べています。 書面添付制度の創設は、昭和31年に遡りますが、法制度も未整備であったことから、その利用は長期間低調でした。やがて昭和50年代半ばにTKC全国会が、書面添付制度に着目し、その実行に先鞭をつけました。TKC全国会は、創設以来「租税正義の実現」を掲げ、TKC会員は、税理士法第45条に規定された「真正の事実」を確保するために「巡回監査」を実行しており、この「巡回監査」の延長線上に「書面添付」の実行が位置付けられました。しかし当初は件数がなかなか伸びず、地道な書面添付推進運動が継続されました。 やがて、平成13年度の税理士法改正で、書面添付実施企業への税務調査の事前通知前に税理士への意見聴取を行う制度が拡充され、これが一つの契機となって、書面添付の実践数が次第に増加していきました。その後、税理士への意見聴取の結果、調査の必要性がないと認められた場合には、税理士にその旨発刊にあたって

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