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 この「家制度」は、明治31年に制定された民法(以下「旧民法」)において規定された日本の家族制度であり、親族関係を有する者のうち、さらに狭い範囲の者を、『戸主』と『家族』として1つの「家」に属させ、『戸主』に「家」の統率権限を与えていました。江戸時代に発達した、当主に家の統率権限を与えるという武士階級の家父長制的な家族制度を基にしています。 「家」は、『戸主』と『家族』から構成され、『戸主』は「家」の統率者であり、『家族』は「家」を構成する者のうち戸主でない者をいい、1つの「家」は1つの戸籍に登録され、同じ「家」に属するか否かの証明は、その「家」の戸籍に記載されている者であるか否かにより行われていました。 そのため、旧民法の条文は「父ノ家ニ入ル」「家ヲ去リタル」などという表現になっています。これは戸籍の面から、それぞれ「父の家の戸籍に入籍する」「家の戸籍から除籍された」ことを意味します。「家付き娘」や「勘当」などの言葉がよく出てくる時代小説には、そのころの人が考えていた家制度が背景にあるのです。 なお、戸籍を管理するための法律として、旧民法に代わり昭和23年に施行された戸籍法では、三代以上の親族を同一戸籍に記載できないとされていますが、旧民法における家制度では、家の構成員は二代に限らず何世代にわたってもよく、戸籍上の制約はありませんでした。 現在の民法では、20歳を超えれば、結婚するに当たって必要なのは両者の合意のみで、親の同意はいりません。もちろん、住所をどこにするかも子の自由です。現在の社会では、20歳になることは「成人」になることであり、法律的には親の束縛から自由になるという非常に大きな分岐点です。 一方、戦前の旧民法における戸主は、家の統率者としての身分を持つ者として戸籍の筆頭に記載され、戸籍の特定は戸主の氏名と本籍で行われました。さらに、以下のような戸主権を有し、家族に絶対的な権力を持っていたのです。(1)家族の婚姻・養子縁組に対する同意権(旧民法750)(2)家族の入籍又は去家に対する同意権(ただし、法律上当然に入籍・除籍が生じる場合を除く)(旧民法735・737・738)第2節戦前までの旧民法の原則は“家督相続”■3.戸主の権利・義務

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