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本書は、第一線で活躍される税理士および税理士事務所の職員の方々を主な読者対象としている。税理士・公認会計士向けの月刊誌『TKC』に五年間にわたって、隔月掲載した同名シリーズの連載原稿が本書の中核になっている。同連載は、『租税正義』を根底に据えた租税法の基礎理論を平易に解説する、「租税法講座」の執筆を編集部から依頼されたことによる。会計事務所経営の要諦は、『租税正義』の理念を中核にしたブレることのない職務の遂行により、紛争を予防することにあると確信する。税理士実務における紛争予防は、租税法律主義を基本に据えたリーガルマインドの構築にあるという点に尽きる。すなわち、租税法律主義は予測可能性と法的安定性を納税者に付与する租税法の基本原理であるから、税理士実務の基本に、「税法のとおりに」という租税法律主義に基づく法的思考を構築することにより、租税法上の法的紛争を予防することも可能になるはずである。租税法律主義を税理士実務に展開することこそが紛争予防に直結するのである。本書のコンセプトは、この紛争予防のための租税法学の理論構築にある。法的ではなく主観的判断は、状況によりブレることは必然といえよう。一方、法的判断は、クライアントにその判断の根拠を明示できるばかりでなく、税務調査時にも調査官を説得する唯一の根拠となり得る。なぜならば、税務行政を担う調査官も租税法律主義の支配の下に置かれているからである。徴税額を極大化したい国家と、納税額を最小化したい納税者の間には鋭い対立・紛争が生じるのは不可避である。はしがきi

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