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本章では、社会的ニーズに対応した本物の税理士の要件と租税法を学ぶ意義をリンクさせて検討する。検討のツールとして「プロフェッションとしての税理士」をキーワードにする。読者の皆さんと、本物の税理士として勝ち組の地位を確保するための要件を租税法の視点から再考できればというのが本章のテーマである。税理士法一条は、「税理士は、税務に関する専門家として、独立した公正な立場において、申告納税制度の理念にそつて、納税義務者の信頼にこたえ、租税に関する法令に規定された納税義務の適正な実現を図ることを使命とする」と定め、税理士の使命を誇り高く宣言している。松沢智『税理士の職務と責任(新版)』(中央経済社、一九九一年)注⑴は、この税理士法一条の各文言の意味を次のように明確にされている。すなわち、「『税務に関する専門家として』とは、税理士が独占的業務の主宰者として(納税義務者の)納税義務の実現を図る職務の内容を意味し、『独立した公正な立場において』とは、(納税義務者の)納税義務の実現を図るための税理士の地位を明らかにし、『申告納税制度の理念にそって』とは、(納税義務者の)納税義務の実現を図るための目的を意味し、『納税義務者の信頼にこたえ』とは、(納税義務者の)納税義務の実現を図るための責務ないし心構えを意味する。そして、右の納税義務も、法令に規定されたものに限って、それを適正に実現することにある。これらの用語は、要するにいずれも、同条後段の、納税義務の実現を図るための修飾語であるからである。すなわち、税理士はこのような職務の内容、地位、目的、責務ないし心構えをもった重大な使命を負っていると二 税理士法一条の税理士の使命──申告納税制度の担い手が税理士 10

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