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る注⑶。先進諸国との比較においても手続の未整備は歴然としている。したがって、手続規定の不完全さゆえに調も引くに引けない状況に陥る。一般的にこの種の対立は、主張する側の背景にある力の大きさにより勝敗が決せられることになるから、Xは不利な立場に追い込まれる。すなわち強大な組織を背景とする課税当局側のY調査官の主張が議論を制することになる。この場合にXが活路を見出すためには、この議論を法の支配のもとに置くことが有用である。そもそも、法の目的である正義の意義は、強者が弱者を理不尽に支配していくことを阻止し、両者の関係を公平かつ対等に保つことにある。そうすると、税法はXがYと対等な立場で自己の主張を展開していくための唯一の土台ともいえる。さらには、租税法律主義の下では、Xの申告の正当性は税法により論証する以外に立証できない。」すなわち、税務調査においては調査官が優位な立場に立つのは当然である。それは、わが国における税務調査規定は質問検査権を授権するのみで、手続規定がないに等しく、納税者の権利保護の視点からすると相当に遅れてい査官の裁量を広く認めているのが現状である。さらに、調査官は国家という巨大な権力を背景にして調査権を行使する。不完全な調査手続の下で調査立会いをする税理士の防御法は何か。それは税法のとおりに申告したことをリーガルマインドにより論証することこそが最強の防御法といえよう。調査過程において税理士に力を与えるのは租税法律主義の存在である。税務調査では、納税者の申告の適法性が争点とされるのである。申告の適法性は、まさに法的三段論法により明確に論証する以外にない。すなわち、①事実認定、②課税要件、③課税要件の事実へのあてはめ、のそれぞれの段階で適正性が担保される7序章 リーガルマインドと紛争予防

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