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考えることなのかを次の事例により確認しよう。甲弁護士は神保町駅前のビルの一室で法律事務所を十年前に開業した。業務は順調に拡大し、顧問先数も一〇〇社を超え、平成二十一年の年収も五〇〇〇万円を超す勢いであった。そこで、開業時よりこれまで事業所得として青色申告してきたが、給与所得控除を利用した節税を思いついた。そこで、その節税策として、今年は一〇〇社のうち五〇社の社長と相談のうえ雇用契約を締結し、顧問料収入合計八〇〇万円を給与所得として申告することにした。顧問料は毎月二十五日に指定口座に定期的に振り込んでもらい、その都度給与明細書を受領し、源泉徴収をしてもらうことにした。また、各社には自分用の机を用意し、さらに、毎月二回は約四時間その会社で社長の相談や従業員の雇用上の法的問題について助言をするなどの執務をこなした。この甲弁護士から乙税理士が、このような収入を事業所得から給与所得に変更するというスキームを構築することにより節税が可能であるか否かの相談を受けたとする。甲弁護士の相談に対する回答は単純化すると、肯定する場合と否定する場合で二通りの回答が想定できる。さらに肯定する場合にも法的に考えて肯定する場合と、そうではない場合の二通り、否定の場合も二通り考えられる。すなわち、合計四通りの回答方法が考えられる。ここでは、否定する場合を取り上げる。第一の回答法は、常識を働かせるか、もしくはフィーリングで考える方法である。すなわち、従来事業所得で申告していたものを、雇用契約書を作成し、机を置いたからといって給与所得に所得区分することは形式的に過ぎる。よって税務調査で否認されるからその節税策は失敗すると回答する。一方、法的回答法とは、所得税法二八条が「給与所得とは、俸給、給料、賃金、歳費及び賞与並びにこれらの性4

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