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産させないものという社会通念があった頃は、メインバンクのカルテル行為もアドバイスによる返済誘導も、弁護士は独占禁止法違反とも民法抵触行為とも言いませんでした。とはいうものの、バブル崩壊後に起きた中小企業の倒産、貸し渋り・貸し剥がし問題の発生以降は、メインバンクによる複数行貸出条件調整は、これらの法律の運用によって、できなくなってしまったのです。かつてのメインバンクの役割や権威は、この融資条件の仕切り力に裏付けられたものでしたから、現在は、すでにメインバンクはなくなってしまったとも言えます。その上に、貸出残高の半分以上は保証協会の保証付きの貸出になっていたり、もともと、民業圧迫にならないようにメインバンクにはなれない筈の政府系金融機関の貸出残高が圧倒的なシェアになっていることもあります。これらによっても、かつてのメインバンクの役割は演じられなくなってしまいました。このような、中小企業の貸出環境やメインバンク機能の大きな変化によって、バンクミーティングの位置付けは一層重要になってきました。かつて、メインバンクが仕切ってくれた中小企業への支援策や貸出条件緩和策、また、毎月・毎年の返済金額などは、バンクミーティングにおいて、中小企業やその支援者である税理士・公認会計士また認定支援機関などの提案によって、複数の金融機関が一斉に検討をスタートすることになり、その後、時間をおいて、各金融機関の本部が正式に支援策や貸出条件緩和策の意思決定を行うようになったからです。したがって、中小企業やその支援者である税理士・公認会計士また認定支援機関などは、この「経営(改善)計画と返済計画の提案書」策定にあたり、金融機関の考え方や担当者・本部の決定権限などを十分把握しなければなりません。また、各金融機関の貸出内容ばかりではなく、その取引履歴や引当状況、信用与信の現状、時には、引当金の積み上げ状況なども推察することも必要になります。「経営(改善)計画と返済計画の提案書」策定に際しては、中小企業・金融機関との情報交換を密に行わなければなりません。更には、この提案書は長期計画ですから、企業自身の内部組織や役職員の心構えの構築、時には、内部体制の変更や新組織毎のセグメント計画も検討しなければなりません。もしも、現在のままでは、その計画が達成できないならば、新たな人材採用や設備投資また追加資金の調達も目論まなければなりません。とにかく、バンクミーティングを開催するに当たり、中小企業としては、「金融機関に再生をお願いするのだから、金融機関の言うとおりにしよう」というような、他力本願の考えは捨てなければなりません。また、その支援者である税理士・公認会計士また認定支援機関などは、「先ずは、金融機関の支店の融資担当者の顔色を見ながら、『経営(改善)計画と返済計画の提案書』を作成し、その意見を都度聞いて通りやすい提案書にしよう」などと、考えるべきではありません。支店の融資担当者に加筆・修正を加えられないような、本部・審査部のメンバーが納得できる提案書を自信を持って作成するべきです。金融機関の本部・審査部のプロのメンバーの方も、中小企業や税理士・公認会計士また認定支援機関などに対して、「どうせ、自分たちの求める内容の提案書など出てくるはずはない」などと思わず、水準の高い提案

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