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中小企業経営者にとって銀行員は、なかなか思っていることを言えない相手です。その銀行員が一同に会する会議であるバンクミーティングでは、極めて高いストレスが溜まるものです。また、百戦錬磨の税理士・公認会計士また認定支援機関にとっても、銀行の貸出窓口で融資案件についての議論をした経験はほとんどなく、やはり大きなストレスをもたらします。しかし、そのバンクミーティングのプロセスを冷静に見通せば、経営(改善)計画と各金融機関に対する返済計画の説明、そして、それに対する質問が会議の大半を占めていることがわかります。会議といっても、その場で、中小企業の経営者に対して銀行が経営責任を求めたり、今後の経営方針の変更を強要することはありません。その主な目的は、バンクミーティングに出席する金融機関の担当者が、同時に同じ場所で債務者企業から提供された「経営(改善)計画と返済計画」について、それぞれの金融機関の本部・審査部に稟議書を作成し、意思決定を求めることであり、そのキックオフの会議という位置づけです。中小企業の経営者や支援者である税理士・公認会計士また認定支援機関などにとっては、自分たちの要請する返済条件を100%、全ての金融機関の本部に承認してもらうことが目的になります。そのためには、それぞれの金融機関の稟議起案者である担当者に、自分たちが提出した「経営(改善)計画と返済計画の提案書」以外には、自社に対する種々の拘束事項や追加条件を付けさせないように、しっかりした計画と妥当な条件を予め記載しておくことが大切です。バンクミーティングに提出する計画や条件は、前もって、メインバンクやサブメインバンクが承諾できるものに仕上げておくことがポイントになり、事前にそれらの銀行と意見調整をすることもあります。もちろん、会議である以上、予期しない意見も出てきますから、想定質問に対する回答を用意しておくことも必要ですし、特に、「経営(改善)計画と返済計画の提案書」の十分な事前検討が欠かせません。また、会議をスムーズに進めるためには、会議の次第を決め、整斉とした意見交換ができるように運営することが重要です。一方、バンクミーティングはメインバンクがうまく仕切ってくれ、債務者や支援者である税理士・公認会計士また認定支援機関は、メインバンクの意向に沿って動くものと思い込んでいる方もかなりおられます。実は、高齢な中小企業の経営者が抱くメインバンクは、現在はほとんど存在しません。昔のメインバンクは、業績が落ち込んでしまった取引先に対して、その複数の金融機関を自行に集めたり、それぞれの金融機関を回ったり、時には電話をし合って支援策や貸出条件緩和策を打ち合わせし、毎月や毎年の返済金額や条件の方向性を決めていました。しかし、現在では金融機関は独占禁止法の縛りがあり、弱者である中小企業の貸出条件の調整を、強者である金融機関が意見交換をして行うことはできません。カルテルや優越的地位の濫用と見られてしまいます。また、銀行のアドバイスによって、自行の貸出の返済をさせることは、民法の利益相反行為と見られてしまいます。金融機関は、中小企業を、原則、倒はじめにサンプル版のため一部のページを掲載しています

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