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6 ただし、そこへ意見集約するには現実的な金融機関同士の意見がバンクミーティングの席上で交わされるので本事例が参考になれば幸いである。 最後に蛇足だが重要なことは、当然に個別金融機関へ恣意性が働くようなものであってはならない。すべての金融機関が衡平性を認識するものであることが重要である。この点に最大の注意を払った経営改善計画書にしなければならない。①‌有利子負債が54,000万円と過剰である。絶対額の減少へ向けての具体的方策の有無②計画での投資CF支出の蓋然性検証。ER※による具体的必然性の検証③‌○○ハウジングとの契約進捗によるFCFの増加をどのように返済計画に取り込むか これら3点について以下のような事前調整を行った。 ※‌‌ER(エンジニアリングレポート):装置産業等の場合、建物の管理状況・構造・設備等の劣化状況、耐震状況等について第三者的見地から行う調査(今後の設備更新計画も把握)①‌代表者、代表者弟が実父から相続した遊休資産(実家の土地建物)を売却し有利子負債の削減を図る。売却価格が1億円と想定されたので全額返済に充当し総借入金額を44,000万円まで減少する。44,000万円÷800万円≒55年での債務償還が想定される。このように取引金融機関へ正式に担保提供していない個人的資産を有利子負債へ充当する方法も各行で議論が分かれるところである。つまり、返済可能額を残高プロラタ返済を想定するのであれば売却金額1億円を各行に融資残高に応じてA行:163,135千円÷541,902千円(30.1%)、以下同様に返済充当することが考えられる。しかし、本事例の場合はB行、E行にあっては保全率100%の完全保全であることから信用残による充当が衡平性確保の観点から採用されよう。つまり、本件の場合は「金融機関別借入金状況」(P38)の非保全額割に基づき1億円の51%である5,100万円をA行に、C行に1,500万円、D信用金庫に2,500万円、H行に900万円の返済である。②‌設備専門業者と当社の間で既存設備の修繕・更新計画を検討した結果、計画3年目からは約500万円の投資CFの削減が見込め、その金額を返済額に上乗せすることが可能と思われる。③‌本計画は○○ハウジングとの受注契約が本格化するまでの暫定計画として対応6.意見集約へのアプローチ 策定した経営改善計画の蓋然性を評価し、続いて経営者一族からの借入金を中小企業特性として実質自己資本評価した取引金融機関ではあるが、有利子負債総額を毎年の返済額で割ると約68年の債務償還年数を要することが最大の問題であった。この点の合意を得るため融資残高も非保全融資額も最大であるメイン銀行のA行と事前調整を行った。調整は主として以下の3点に集約される。

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