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44.取引金融機関の合意と支援 家業的中小企業を除いた多くの中小企業では複数の金融機関と取引があるのが一般的である。本事例の様に計画書策定前の毎月元金返済額は約680万円で年間返済額は8,000万円超となる(P38、金融機関取引状況)。これでは、当社年間の簡易キャッシュフロー約2,200万円(P40、5か年損益計画)を大きく超えることになり、3~4か月返済が進むにつれ資金不足を招き新たな資金調達の必要が生じてしまい、経営者は資金繰りに悩まされ、本来業務に齟そご齬をきたすことになる。そこで事例の様な「経営改善計画書」を策定し、取引金融機関であるA行からH行までのすべての金融機関に一堂に会してもらうバンクミーティングを開催することになる。計画の骨子は、当社の財務D/Dを行い実態貸借対照表と経営者一族からの借入金約1,800万円を中小企業特性として考慮し(P24~P25‌実態B/S)、金融検査マニュアル上の正味純資産は▲3,695千円と考えて実質債務超過の解消は3年程度で実現できることとしている。問題は有利子負債の合計54,000万円に対して計画のフリーキャッシュフロー800万円では債務償還年数がおよそ68年にも及ぶことである。次の問題点は、借入当時の各行との約定返済額の減額と割り振りの仕方である。本件事例の場合は、「残高プロラタ返済」を提案し、取引金融機関の合意を得た事例である。合意に至るまでの各金融機関のバンクミーティングでの発言内容を紹介したい。5.プロラタ返済 金融円滑化法に基づいて元金返済猶予を得ている企業が経営改善計画書を作成し、計画書の中に謳われたアクションプランに基づいた返済を再開するときに元金返済猶予前の返済額が再開されるのであれば問題は生じないが、経営改善計画書に(2)経営改善計画の説明 前記(1)に至った理由を金融機関へ説明し、今後の改善策を協議するためには、経営改善計画書を作成し、全行へ説明しなければならない。このときの情報開示や各行への依頼事項に疑心が生じないようにしなければならない。(3)経営改善計画の進捗状況説明 経営改善計画には当然に具体的進捗計画(アクションプラン)を纏めているので、その計画の進捗状況を全行へ定期的に報告する必要がある。所謂、モニタリング会議を必要に応じて開催することになる。一般的に計画のスタートに当たっては、毎月1回~隔月1回、計画の進捗状況次第では(概ね90%以上の達成率)であれば3か月~半年1回程度になることが多い。また、計画の進捗状況に計画との大幅乖離やコベナンツヒット(財務制限条項に抵触した場合)が発生し、金融機関が期限の利益を喪失させるような状況へ進むことを回避させる目的で開催することも希にはある。

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