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ています。平成18年度の税制改正により、上記のように「その他国税庁長官が定める書類」が追加されたので、それまで生じていた次に述べるような問題の大部分は解決されるに至りましたが、法令解釈の基本として、この条文の読み方について述べたいと思います。 実際にあった例は、相続税の物納申請書だけを郵送し、その日付印は期限内でしたが、税務署への到着は期限後であったというケースです(税理士界1112号11頁)。 結論からいえば、上記の改正前は、相続税の申告書と一緒に物納申請書を郵送すれば、ともにその提出が期限内であったかどうかは、その通信日付印で判定しましたが、本件のように物納申請書のみを郵送したときは、現実にその申請書が税務署に到達した日でもってその提出が期限内であったかどうかの判定が行われました。 これは、上記条文中の「当該申告書」(波線の箇所)の解釈によります。つまり、法令用語としての「当該」を用いた「当該申告書」とはその字句の直前に規定されている「納税申告書」を指し、上記条文の場合には、「今まさに郵送しようとしているその納税申告書」を指すことになります。すなわち、「当該」とあれば、具体的な事物を念頭に置かなければなりません。したがって、上記の改正前においては、いま郵送しようとするその納税申告書に同封して郵送する物納申請書には上記条項は適用されましたが、物納申請書のみの郵送にはその適用はなかったのです。(2)「当該」とは既出の特定の事柄を指す 上記条文のかっこ書が、仮に「(当該申告書に添付すべき……)」ではなく、「(納税申告書に添付すべき……)」という表現であれば、一般的に納税申告書に添付すべき書類等についても、その通信日付印で判定されることになるのですから、物納申請書だけを郵送してもこの特例規定は適用されます。しかし、条文は「納税申告書(当該申告書……)」と規定していますから、今まさに提出しようとしているその相続税申告書と一緒にその申告に関連する物納申請書を提出して、初めてこの規定が序 章  「法令を読み解く力」「判例を活用する力」を養うことがなぜ必要か7

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