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 通達も、一種の解説です。法令解釈通達は、国税庁長官が税法を自分なりに解釈したことを同庁の職員に周知させようとするものです。もち論、それなりに権威のある解釈です。しかし当然、通達においても、国税庁が言いたいことだけしか書かれていないし、また、問題があると考えれば触れないし、通達の執筆者が思い至らなかったことは書かれていません。通達には、このような制約があるのです。 したがって、会計事務所の場合、解説や通達のみに頼って仕事をすれば、顧問先に損害を与えるおそれもあることを肝に銘じておく必要があります。順次、その理由を説明します。2 法令を読まずに解説や通達のみに頼ると失敗する(1)こんな失敗例 1つの例を挙げましょう。消費税法第37条第1項の「消費税簡易課税制度選択届出書」に関するある解説を見ると、「事業年度末までに届け出れば、その翌事業年度から簡易課税の適用を受けることができる」旨が書かれています。この解説によれば、あたかも事業年度末がこの届出書の「提出期限」のように読めます。 一方、国税通則法第10条第2項の「提出期限が休日等の場合の期限の特例」に関する解説を読むと、申告、申請、提出等の期限が日曜日等の場合には、期限はその翌日に延長されると書かれています。そこで、この2つの解説を併せて、それでは簡易課税制度選択届出書の提出期限(正確には提出可能な最終日)がたまたま日曜日であった場合には、月曜日に提出すればよいなどと勝手に解釈すると大間違いとなります。 なぜなら、消費税法第37条第1項の条文を読むと、「事業者が……届出書を提出した場合には、当該届出書を提出した日の属する課税期間の翌課税期間……以後の課税期間……については」簡易課税を適用すると規定されており、これによれば、届出書の提出は簡易課税制度の適用を受けるための要件であって、事業年度末は決して届出書の提出期限ではないのです(消費税法は、「事業年度末までに届け出なければならない」4

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