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現在、我が国では年間120万人を超える人が亡くなっており、今後ますます、核家族化が進む中で、高齢夫婦世帯や高齢単身世帯が増加し、相続手続きの代行業務としての遺産整理業務について、社会からの要請は増加の一途にあると思われます。準確定申告業務は、税理士の独占業務であり、相続開始のあったことを知った日の翌日から4か月以内に被相続人の所得税等の確定申告を行う必要があります。そのため、相続が発生した後、相続人と早めに接触を持つことができることから、相続税の申告義務の有無に関わらず、遺産整理業務を相続税の申告業務の一環と位置付けて、税理士の業務範囲に加えることで職域拡大につながるものと思われます。その意味でも、準確定申告業務は遺産整理業務への取組みの第一歩とも考えられます。遺産整理業務を税理士が取り組むべき当然業務として位置付け、相続税の申告受託に積極的に取り組もうと思う場合、戦略的には、不動産賃貸業の所得税の確定申告の受託→遺言書作成のお手伝い→準確定申告の受託→相続税の申告業務・遺産整理業務の受託という流れになります。税理士にとって遺産整理業務における最も重要な「財産目録」の作成は、日頃の相続税の申告業務を通じて培ったノウハウを駆使して、他の専門家と明確な差別化を図ることができる部分でもあります。税理士を取巻く経営環境は厳しく、税理士事務所の主たる収入である企業からの顧問報酬は減少傾向にあり、事業者数も減少し、新規事業者数が廃業事業者数を下回る状況が長年続いています。一方、税理士登録数は毎年増加し、競争は激化しています。今回の平成25年度税制改正により、平成27年1月1日以後に開始した相続から、相続税の基礎控除の引下げや最高税率の引上げ等の相続税の増税に向けた改正が行われることとなりました。そのため、現行制度では相続税がかからないと思われる人や、改正に伴い相続税の増税につながる富裕層にとって、相続税対策は、喫緊の重要な課題となっており、相続対策に関する相談が増加しています。相続税の申告義務がない案件でも、未だ手つかずの遺産整理業務に取り組むことは、税理士が専門家として社会のニーズに応えていくことにつながると考えます。本書は、実務家のために準確定申告の概要とその留意点や、遺産整理業務の具体的な取組み方などについて解説しています。本書が、読者諸賢にとって少しでもお役に立てば幸いです。なお、文中意見に渡る部分は、私見ですので、念のため申し添えます。平成25年7月税理士 山本和義はじめに

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