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5金の取引明細などからすべての遺産の洗い出しが必要となります。昨今、核家族化が進み、被相続人と相続人が別生計であることが多く、被相続人の財産が生前、どこでどのように管理・運用されていたかが分からない事例が少なくありません。遺産整理業務で重要なことは、遺産のすべてを正確に把握することであり、その点に関しては、相続税の申告実務などを通じて培ったノウハウを有する税理士が唯一の専門家といえます。 また、遺産分割においては、民法の規定する分割の基本に準拠して共同相続人間で分割協議がスムーズに運ぶことが望ましいといえます。具体的には、遺産に属する物又は権利の種類及び性質、各相続人の年齢、職業、心身の状態及び生活の状況その他一切の事情を考慮して行うよう民法で定めています。「年齢」は年少者を、「心身の状態」は心身障害者等を、「生活の状況」は生存配偶者の居住権などをそれぞれ主として配慮しての定めだといわれています。 しかし、分割協議においては、結果的にどのような分割になっても、意見の一致を得たものでさえあれば、協議は有効とされます。そこで、遺産整理業務にかかわる場合には、共同相続人間で遺産分割協議がスムーズに調うよう、税理士が中立的な立場から的確なアドバイスと調整役を担うことが肝要と考えます。 遺産整理業務が遺言執行と異なる点は、相続人との契約に基づいて、はじめて業務遂行に必要な権限が与えられるという点であり、遺産整理業務の契約と業務遂行にあたっては、共同相続人全員の信頼と協力を得ることが重要なポイントとなります。① 事前のご相談 相続人の状況や遺産の概要の把握、遺言書の有無の確認、相続や遺産分割を行う場合に必要な書類や手続、スケジュール等についての説明など。通常この時点では、費用が発生することは少ないと思われます。【第1章】準確定申告と遺産整理業務(2)遺産整理業務の流れ 遺産整理業務は、相続の開始後に相続人全員から委任を受け、受任者として遺産の調査・実態の把握及び分配の手続、債務の履行、相続に伴う納税等を行う業務です。具体的には、①請求(もらう)手続、②承継(引継ぐ)手続、③廃止(やめる)手続、及び④死亡に伴う手続等が該当します。 遺産整理業務の対象者として考えられるのは、①相続に関する手続に不慣れな方・時間のない方、②遺産分割の方法・分割後の財産運用についてアドバイスして欲しいという方、③自筆証書遺言があるが、その後の手続をどうしたらいいのか悩んでいる方などと思われます。 そこで、以下に、税理士が遺産整理業務を行う場合の標準的な流れを紹介します。

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