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2 相続に係るマーケットでは、税務に関しては税理士が、相続争いに発展する場合には弁護士が、それぞれ独占業務としており、大口の資産家にターゲットを絞った遺言信託と称する遺産の名義変更業務は信託銀行が市場を押さえています。 しかし、手つかずの大きなマーケットがあります。それは、遺産整理業務です。キーワードは、「そのものを狙うな」です。リコー三愛グループの創始者である市村清氏が子供のころ、父から教えられたという「スズメ捕り」の話で、実に明快にこの教訓が紹介されています。「スズメを捕ろうとするのに、スズメを狙うやつがあるか、スズメが一番大きくなるのは飛び立つときだろ」スズメを捕るには、目に見えているスズメそのものを狙ってはならない。スズメの習性や周囲の状況を考えたうえで、最もタイミングのあった点が急所なのである、ということです。 平成15年に年間死亡者数が100万人を突破し、平成17年には年間死亡者数が出生数を上回り、平成22年には約120万人が亡くなられていて、その後も死亡者数は増加の一途です。一方、世帯数は平成27年まで増加する(国立社会保障・人口問題研究所)との推計があります。このことは、高齢単身世帯、高齢夫婦世帯の増加を意味し、平成27年には35%が高齢者世帯(世帯主が65歳以上)になると予想されています。 そのため、相続が発生すると、遺産がどこでどのように運用・管理されていたのか分からず財産の把握に苦労したり、被相続人の居住地と遠く離れた所に居住する相続人が遺産の名義変更などを行うために大変な労力と時間が必要となったりするなどの理由から、遺産整理業務に対するニーズは今後ますます高まるものと思われます。信託銀行が有償で行う遺産整理業務(最低金額100万円から)の受託件数は、平成22年には年間2,951件と年々増加の一途です。このことからも、遺産整理業務に対するニーズの強いことが容易に推測できます。 そこで、この章では、税理士事務所を取巻く環境を確認し、遺産整理業務の概要などについて統計資料などを分析し、遺産整理業務のニーズなどを見てみることとします。【第1章】準確定申告と遺産整理業務

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