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18ルカ・パチョーリ簿記・会計に関する金言パチョーリ『スムマ』*1より 十分な注意を払って商業を行うことを望む人にとって、必要なものが3つある。いずれも大事だが、そのうち最も重要なものは、金銭であり実質的資力である。第2のことは、正によき簿記係であり、機敏な計算係たることである。 必要な第3のしかも、最後のことは、すべての自らの取引を秩序正しく[ordine](Ordnung)適切に処理することである。(中略=坂本)。なぜなら、商人の取引において、記録についての正しい秩序がなければ自らを統制することは、およそ不可能だからである。そして、彼らの心は、常に休まらず大なる苦悩の中におかれることになるからである。 勘定と記録のつけ方の中で、どのようにして、秩序正しく進んでいくべきかを明らかにしよう。なぜなら物事を適切に、その場で整理しなければ、すべての業務は最大の骨折りを要するばかりか混乱の中に陥るであろうからである。諺に曰く、「秩序のない処では、すべては混乱に陥る」[Ubi non est ordo,ibi est confusio](Wo keine Ordnung herrscht,entsteht Verwittung)と。世界最初に出版された複式簿記解説書の著者*1 Summa de Arithmetica, Geometria, Proportioni et Proportionalita(『算術、幾何、比および比例に関する全集』、以下『スムマ』と表記する)。邦訳は岸(1990)337−339頁を参照。[ ]内はSummaの中世イタリア語原文、( )内はPenndorf(1933)のドイツ語訳である。Summaの原文は、パチョーリ生誕500年を記念して日本簿記学会(会長は武田隆二神戸大学名誉教授=当時)から限定配布されたSummaの複写本を参照した。 すべての自らの取引を秩序正しく適切に処理する。

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