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会計報告は「出口論」ですが、内部統制は「人口論」から始まります。その統制範囲は日々の取引現場からスタートするのです。したがって会計事実の認識と会計記帳の見直しから始めなければなりません。その目的は、企業の倒産を招くすべてのリスクを経営者が自らの責任において排除し、会計報告の適正性を保証することです。こうして「出口論」に傾いた会計学が、会計のすべてのプロセスをめぐる本質論に復帰してくることになるのでしょう。この問題は古くて新しい問題です。日本では正確な記帳の重要性について、古くは三百年以上前に井原西鶴(一六四二〜一六九三)が『西さ鶴か織お留ど』において、──万よずの事に付て帳面そこそこにして算用こまかにせぬ人、立身出世するといふ事ひとりもなし──と述べているそうです(アレックス・カー著『犬と鬼』二〇〇二年・講談社・一二六頁)。ここで「立身出世」を「企業の存続発展」と読み替えれば、会計の本質が浮き彫りになるのではないでしょうか。現在、会計事務所の所長であると同時にTKC全国会の諸活動を牽引する会員の一人である坂本先生は、TKC全国政経研究会幹事長として、租税正義の実現を目指す法制度改革の先頭に立って提言活動をしておられます。TKC全国政経研究会の近年の活動成果は「コンピュータ会計法」法制化、さらに商法本則と会社法に、記帳条件として「正確性」と「適時性」の文言が盛り込まれたことなどに大きく結実しています。さらに「中小企業の会計指針」の策定においては、坂本先生がその生みの親の一人といっても過言でないことが、本書をお読みになった方にはお分かり 3    いくりめろ

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