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たらどのように答えますか。わが国の多くの中小企業経営者は、本音では「税務署に申告書を提出しなければならないから、記帳をして決算書を仕方なしに作っている」とお考えではないでしょうか。もしかしたら、会計のプロである税理士や公認会計士の中にも、そうした考えで関与先に接している人がいるかもしれません。ところが同じ質問を会計学者にすると決算書は外部の株主などのために作成すると答えると思います。例えば、大蔵省企業会計審議会会長を永年勤められた、日本を代表する会計学者である某教授の著書にも「企業外部の利害関係者に経営状況を報告するための会計を財務会計という」との解説があります(この場合の利害関係者とは株主や投資家)。わが国の会計学の文献では例外なくそのように説明され、税理士や公認会計士を目指す受験者は、こうした専門書で会計を勉強しているわけです。しかし、その説明は正しいのでしょうか。確かにこの説明は大企業や公開企業にはあてはまるかもしれません。考えてもみてください。中小企業のほとんどは株式未公開の同族会社です。そんな会社の社長さんから「なぜ記帳をし、決算書を作成しなければならないのですか?」という質問を受けて、税理士や公認会計士が「投資家など外部の利害関係者に経営状況を報告するためです」と説明したら、社長さんは果たして納得するでしょうか。納得するはずがありません。多くの中小企業にとって、そもそも投資家などは存在しない    28

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