たり、その数値の差異分析やローリングプラン案(定期的見直し修正案)が社内から出てくるような体制が好ましい。とは言っても、経営改善計画書の目線は、金融機関や会計のプロである税理士・会計士の先生においても未だにできているとは言えない。これらのプロの方々は貸借対照表や損益計算書などの決算書を見れば、細かな比率の吟味をしなくとも企業の安定性、収益性、成長性などの評価を、瞬時にできるのであるが、これは決算書における財務分析などの目線が頭の中にたたき込まれているからである。本書では、実現可能性の高い抜本的な経営改善計画書の目線を是非とも読者の方々に把握して頂き、頭にたたき込んでもらいたいと思っている。なお本書の事例は金融機関の本部、審査部、融資部から取締役会までの検討資料として実際に使われたものである。一般に金融機関の本部に上がる貸出案件(稟議・審査案件)はその調査部等業界調査セクションにて外部・内部環境分析のダブルチェックを受けることになっており、本書の事例は全てそのダブルチェックの内容を含んでいる。本件事例を読みこなすことによって金融機関の支店長査定ばかりではなく、本部の申請・審査のスキルまで身に付けられるのである。更に、例えば、再生支援協議会から提出を求められている「経営改善計画」の一見複雑に見えるフォーマットも容易に処理することができると思われる。また、本書の事例のテーマはどの企業でも必ず課題となる貸出金利の引下げ案件や情報開示手法の事例から、あまり遭遇しない再生案件の基本的な考え方を包むサービサー関連事業までを含んでいる。さらに、最近急増しているプロラタ事例やバンクミーティング事例も加えた。本書を通読することによって経営改善計画書の目線を作っていただくことはもちろん、中小企業再生に必要な種々の手法も学んでいただき、当然ながら、その再生手法に最も有効となる経営改善計画の具体的な作成法も修得していただけると確信している。さらに、本書『事例集Ⅱ』の5事例は「小売業・建設業・製造業・建設業(設備工事)・物品賃貸業」の業種に及んでいる。前作『事例集Ⅰ』の「情報通信業・建設業・製造業・製造業(印刷)・宿泊業、飲食サービス業」を合わせれば、「中小企業実態基本調査」(中小企業庁)の主要業種をほぼカバーすることになる。業種面からの企業分析にも大いに活用していただきたい。なお、本書作成に当たり、TKC出版の大石茂取締役、千葉真智子氏に大変ご支援いただいたことを感謝申し上げる。2012年9月中村 中 久保田 博三渡邊 賢司
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