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おわりに経営改善計画は中小企業自身のために作成するものであるが、本書では金融機関に提出するための経営改善計画を想定して述べてきた。金融円滑化法の施行でこの経営改善計画は市民権を得たが、そればかりではなく、金融取引を円滑に行うための新たな情報を加えた計画へとハードルが上げられている。一般に経営計画は予想損益計算書と思われてきたが、金融機関に提出する「経営改善計画」は将来の売上・費用の予想値の根拠を明確に示すべきものである。「実現可能性の高い抜本的な経営改善計画書」であり、現状認識や予測値を厳格に捉えて根拠も明記し、その上に全ての取引金融機関を納得させることが必要である。そこをクリアすれば、逆に金融機関からの適格なコンサルティングやアドバイスを受けることができ、中小企業自身が更に一層の飛躍を達成できることになる。今の金融機関は地域活性化のために地元の発展と雇用に貢献する中小企業を絶対に支援していかなければならないことになっている。本書ではその関連情報や根拠について述べてきたが、ここでもう一度、その内容を整理してみたい。先ずは、金融機関が求める表面的な数値の条件として「5〜10年後に債務者区分で正常先・要注意先になること」と「もしも計画作成時に債務超過があるならば5年以内にそれを解消すること」の2つの条件があることを再確認したい。また、その計画の内容には、「①発射台が贅肉をとった貸借対照表から導き出された損益計算書であること、②初年度以降は、保守的に予測した売上・費用の数値であること、③金融機関において本部の審査部や融資部までが満足する経営並びにキャッシュフローの問題点の分析や、以後の返済金額・期間まで述べた詳細な経営改善計画にレベルアップしていること、④モニタリング手法も具体的に金融機関がフォローできること」の4点が求められたことも思い出していただきたい。更に、「地域金融機関が目指す、地域密着型金融やリレーションシップバンキングと、その中小企業の経営改善計画が同じ方向を示しており、地域のステークホルダーや社会への貢献の内容になっていること」が望ましい。また「自社の情報開示を積極的に行いながら、その内容が金融機関のリスク軽減化に繋がること」が理想的である。具体的には、「財務報告の信頼性、業務の有効性と効率性、法令準拠」等の企業目的や、「統制環境、リスク評価、統制活動、情報と伝達、モニタリング」等の内部統制の構成要素などが、情報として報告されていることが重要である。特に忘れてしまうことが多い「モニタリング」については、社内において、「誰が、いつ、どのようなフォーマットで報告を行うか」まで詰めておく必要がある。しかも、この経営改善計画は、金融機関のメンバーがそれほど手を加えなくとも、金融機関が受ける金融庁検査に十分耐えられるレベルであることが求められる。他にも、再生手法としてDDSやDESまた債権放棄など、金融機関が借入れ人に特別な対応便宜を与える措置を行うときは「①その借入れ人(企業)が保有資産を売却して借入れを返済したり、②株式の減資を行なったり、③代表者がそのポストを去り、④代表者自身の個人資産を売却して借入れ圧縮を図る」などの責任をとることがモラルハザードの観点から必要である。

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