sample9227_57099
3/40

はじめに中小企業金融円滑化法は平成21年12月から施行され、2回の延長を続けてきたが、ついに平成25年3月で終了することになった。民主党政権がスタートしたときの目玉施策として打出した1年間限りの法律はその3倍の寿命を与えられ、金融機関取引の中に「経営改善計画書」の市民権を完全に定着させた。「1年間以内に経営改善計画を出すならば返済猶予を認める」という運用ルールと3年間超に亘る金融円滑化法の施行が、この経営改善計画を不動のものにした。また、平成24年6月には「中小企業経営力強化支援法」が成立し、この法律による経営力強化支援認定者は経営改善計画の作成スキルが必須条件となった。金融機関から借入れを受けるときは、決算書が情報開示資料として必要であるが、中小企業の取引においてこれが定着するまでには数十年も掛かった。今では、ほとんどの中小企業では、付属明細まで付いた法人税確定申告書(写)を金融機関に提出しているが、これは長い期間をかけた金融機関担当者の中小企業への説得の賜物と言える。これに対して、経営改善計画書の提出は、わずか2〜3年の期間で定着しようとしている。確かに、『金融検査マニュアル別冊』が公表された平成14年以降、この経営改善計画書の提出は金融機関から勧奨されてきたものの、金融機関がよほど強く要請しないかぎり、中小企業はこの計画書を出すことはなかった。そして、提出される計画書も、現在常識となっている経営改善計画書のレベルに比べれば、かなり雑駁と言わざるを得ないものであった。数年前の経営改善計画書は、社長のロマンを数値化した予想損益計算書というようなものが多かった。売上予想は漸増、費用予想は漸減、利益予想も少し増加というような見映えの良い計画書であった。しかし、現在の経営改善計画書はこれでは到底通用しない。現在の経営改善計画書は主に4つのハードルを越えなければならない。1つ目は、計画の前年度の貸借対照表の吟味から引当金等の調整を行った損益計算書(発射台)の作成である。ここで、贅肉を落とした減損・時価の調整を行った勘定科目の見直しをしなければ、その計画の実現可能性は大幅に落ち込んでしまう。2つ目は、保守的で現実的な売上・費用の見込値である。過去の売上のトレンドに翌年・翌々年の数値をプロットしただけであったり、売上の増加・販売促進と整合性がなかったり、また右肩下がりの費用見込などは現在の金融機関では認められない。部門や地域に分けた売上予想の合算値、新販売体制に沿った組織図に合わせた費用削減策、またSWOT分析などの経営理論やフレームワークに準じた売上予想が求められる。3つ目には協融各行が全て納得できる返済調整が求められる。経営改善計画によるキャッシュフローは減価償却と税引後当期利益の合算などであるが、そのキャッシュを協融各行の返済にいかに振り分けるかを決めなければならない。この割振り金額が決まらないと、この計画自体を協融各行が認めることはない。結局、この計画は現在の通行手形とも言うべき「実現可能性の高い抜本的な経営改善計画書(実抜計画)」にはならないからである。4つ目は、しっかりしたモニタリングを見通した計画にしなければならないということである。計画作成に全精力を使い果たして、その後のフォローまで考えられないというようでは、企業を成長させる計画は作れない。企業の組織毎に実績・計画の中間ラップが把握でき

元のページ  ../index.html#3

このブックを見る