夢をかなえる経営計画
~会社を元気にして、黒字化を実現する最強ツール~


 公認会計士・税理士 赤岩 茂 著
(著者)

【著者紹介】
赤岩 茂 ( あかいわ しげる)
 公認会計士・税理士・情報処理システム監査技術者。法政大学経営学部卒。在学中に公認会計士二次試験合格。卒業後、監査法人等勤務を経て、平成元年独立。平成14年9月に税理士法人報徳事務所を設立し、代表社員・理事長に就任。
 TKC全国会創業・経営革新支援委員会委員長、明治大学大学院グローバル・ビジネス研究科兼任講師、獨協大学経済学部非常勤講師、古典学習陶冶会副会長、中小企業庁経営革新制度評価委員会委員等をつとめる。
 著書に、『社長の仕事』(共著、TKC出版)、『決算書の読み方基本の基本』(中経出版)等多数。
 税理士法人報徳事務所 http://www.houtoku-tax.com
(目次)

第1章 まだ、成り行き経営をしているのですか?
 1. 「昔は良かった」症候群
 2. 直線では見えない世界をどう読むか
 3. 心の中に無いものは実現しない
 4. 経営計画書は社長のためにある
 5. 経営計画策定の実践手順

第2章 会社を元気にする経営計画
 事例1 「人」重視の理念と経営計画が揺るぎない会社をつくる~坂東太郎
 事例2 クレームやミスも金額で把握し、目標利益を着実に実現~飯田製作所
 事例3 種子茶で国と県から経営計画の承認を受け、夢の実現に取り組む~野口徳太郎商店
 事例4 次世代リーダー育成のため二度目の経営革新計画に挑戦~つくば食品
 事例5 農作物別・部門別利益を明らかにして利益率を確保~森ファームサービス

第3章 経営計画はこうつくる
 1. 利益が命
 2. 必要利益の額をつかむ
 3. 利益の質を検討する
 4. 一人当たりの利益水準を検討する
 5. 目標固定費を策定する
 6. 目標限界利益を策定する
 7. 目標限界利益率を策定する
 8. 目標売上高を策定する
 9. 目標売上高の内容を検討する
 10. 商品別・得意先別に目標売上高を検討する

第4章 経営計画はこうつくる
 1. 黒字倒産!?
 2. 計画貸借対照表を策定する 運転資金関連の資産・負債の計画
  (1) 貸借対照表の構造
  (2) 資金を分類する
  (3) 運転資金関連の資産・負債を計画する
  (4) 確認・検討すべき事項
 3. 計画貸借対照表を策定する 設備資金関連の資産・負債
  (1) 設備投資及び関連資金の計画
  (2) その他投資等及び関連資金の計画
 4. 計画貸借対照表を策定する その他資産・負債と現金預金
 5. 資金計画書を作成する

第5章 魂を込めた経営計画は未来をつくる
 1. 我が社の存在意義 「経営理念」
  (1) 経営理念が企業を救う!
  (2) 「経営理念で飯が食えるか!」
  (3) 理念が独自性を生む―卓越経営者のモデル像
  (4) 経営理念を浸透させよ!
  (5) 経営理念には企業風土形成力がある
 2. 我が社はどこに向かおうとしているのか 「ビジョン」
 3. そのために、何をなすべきか 「戦略」
  (1) 我が社の立地は良好か
  (2) 経営戦略とは何か
  (3) 成長戦略と競争戦略
      アンゾフの商品・市場戦略/PM/競争戦略/価値基準ポジショニング(バリュー・プロポジション)
  (4) 中小企業にこそ経営戦略は重要
 4. 今年の重点課題は何か、それをどのように具現化すべきか 「重点方針」
 5. 具体的に何をすべきなのか 「目標・戦術」
 6. 業績管理システム構築と運用が経営計画達成の鍵
  (1) マネジメント・サイクル
  (2) 非財務データの効果的な活用方法
  (3) 計画が実績と異なる場合の対応
 7. 経営計画を浸透させる
 8. 経営戦略を具現化するための組織のあり方
  (1) 組織は戦略に従う
  (2) 新時代の組織のあり方
  (3) スモール・イズ・ビューティフル

第6章 歴史上の人物に学ぶ変革期の経営戦略
 温故知新
 上杉鷹山 逆境を覆すリーダーシップ
 恩田杢 情のリーダーシップ
 二宮尊徳 名コンサルタントの先駆者
 山田方谷 日本のケインズ

おわりに プロを活用して黒字決算の仕組みをつくろう

参考資料 「継続MASシステム」を使って作成した経営計画書

参考文献


(はじめに)

人間は思ったとおりの人間になる

 人間には素晴らしい能力が与えられています。自分で理想を掲げ、夢を持ち、それに向かって万難を排して努力をすれば、必ずやその夢はかなえられるし、思ったとおりの人生をおくることができる、というものです。ところが、残念なことに、この法則を知る人は少なく、それを実行している人はなお少ない、というのが現実です。この法則が正しければ、人間の集合体である企業も同様の法則に支配されるはずです。
 ところが、企業はさまざまな意識を持った人の集合体ですので一筋縄ではいきません。企業の夢(つまりは経営者の夢)を実現するためには、「経営者の意図」を確実に末端まで浸透させる仕掛け、仕組みが必要です。それこそが「経営計画書」なのです。

 現在、中小企業の実に約7割が赤字であるといわれています。確かに環境の変化が企業の生息を許しづらくなっているという側面もあるでしょう。しかし、社会環境が激変してしまった今、私は、社会から個々の企業経営者が、「自社の存在意義を問われている」という気がしてなりません。時代の変化に対処して「自らを変革していく」ことが要請されているのに変えようとしない姿勢に対して「NO」が突きつけられているのです。
 しかし、中小企業の疲弊は、単にその中小企業だけの問題にとどまらず、日本全体に由々しき影響を及ぼす大問題である、ととらえるべきであると考えます。我が国の企業の所得の約80%は大企業が生み出しています。ところが、雇用の実に約65%は中小企業が支えているのです。すなわち、中小企業は雇用を通じて日本の社会の安定性に寄与しているといえるのです。
 もし、これ以上、中小企業の業績が悪化して、雇用を支えられなくなったら、日本の社会の安定性すら脅かされてしまうでしょう。現にその兆候は間違いなく至るところで現れています。この状態をより善きものに変えていくには適切な政策も必要でしょうが、それ以上に、企業家マインドを持った経営者の自助努力が不可欠であると考えます。

このような経済環境の中で、中小企業経営者にとって大切なことは、優良企業の条件に気づきそれを実践することです。よく、「業種によって業績は変わるのだろう」といわれます。確かにそういった側面もありますが、現在では、同業種の間でも差がつきはじめ、その格差は拡大傾向にあるのです。「業種」だけがその原因ではないことはこのことからも明らかです。


元気な会社には必ず夢と目標(経営計画)が存在する

 疲弊した環境でも3割の元気な会社が存在しているのです。その元気な会社(元気な社長)には次のような共通項が存在します。
 ●我が社の存在意義を明確にしている。
 ●ワクワクする夢、ビジョンを持っている。
 ●戦略性を持っている。
 ●自分の思想や考え方を社内に(ときには利害関係者へも)浸透させる工夫、努力をしている。
 ●その浸透のための方法として「経営計画」を立案し、それを実行している。

 まさに、この壮大な夢を実現するための道具こそが「経営計画書」なのです。本書を手にした皆さんは、いま、この道具箱の扉を開きはじめたのです。


実践こそ命

 私は、公認会計士・税理士として独立してから20年、多くの地域の中小企業に対し、税務・会計業務だけでなく、経営革新、経営計画等の策定、業績管理体制構築のご支援をさせていただきました。その実務経験の中から、企業が存続発展していくための条件を自分なりに考え体系化してまいりました。その内容の一端は過去にも『継続MAS実践マニュアル』(TKC出版)や『社長の仕事』(同)などにおいて発表させていただきました。今回は、このうち、「経営計画」にスポットをあて、その策定の仕方・活用の仕方を余すところなく記しました。
 私は実務家ですので、空理空論を述べるつもりはありません。
 本書では、さまざまなご支援の過程で、実際に活用でき、成果の出る方法論を学び、実践してきたことだけを紹介します。そしてなにより私自身、税理士法人のトップとして、計画を策定し実行した経験から、経営計画を活用した会社は、間違いなく強くなることを確信するに至ったのです。

 約15年前、経営計画策定のご支援を始めた当時は、「経営計画を作っても無駄」という考え方が大勢を占めていたのでした。しかし、現在はどうでしょうか。
 「経営計画が無駄」という考え方こそ少数派になりつつあります。
 これは、本書で紹介する実例によっても理解できるでしょう。


このような方にこそ本書は役立ちます!

● 現在は黒字だがもっと良い会社をつくり、お客様や社員や社会に対して更なる貢献をしたいと願う経営者の方々
 →本書をお読みいただくと、なんと自分の考え方と同じだと思われるでしょう。それでいいのです。その考えを自信を持って貫き通すことです。
● 現在ちょっと弱気になっているが、それでも良くしていきたいと考えている経営者の方々
 →自分の我欲を捨て大欲を持ち、本書で提案する方法論を実践すれば間違いなく良くなっていくでしょう。
● 業績が悪いが、今のままで仕方がない、とあきらめている経営者の方々
 →残念ながら、あまり参考にならないでしょう。しかし、もし、心にトゲがささっているなら、そのうち、一本くらいは抜けるかもしれません。

 本書は、「企業経営を通じて自分の夢を実現したい」と本気で念じている経営者のために書きました。中小企業経営者により良い会社をつくっていただきたいとの祈りを込めました。
 なぜなら、現在の社会システムの重要な位置を占める企業、その経営者が本物の経営に目覚めることこそが、地域をそして日本を良くしていくと確信しているからです。
 そしてこれこそが、私の願いだからです。
 本当は第1章からお読みいただきたいのですが、章ごとに独立していますので興味あるところから読み進めることも可能です。
 さあ、扉を開けましょう。扉の向こう側には、あなたの夢の実現のための道具がつまっています。これらを活用し、ぜひとも夢をかなえてください。

赤岩 茂

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