「TKC会報」巻頭言抜粋
職業会計人の行動指針


 飯塚 毅 著
(目次)

第1章 事務所経営の基本
 (1)所長の姿勢
 ・ 職業会計人としての気骨と決意を持て
 ・ 「畏れのない心」と「直観力」を培養せよ
 ・ 所長の人間的鍛練が必要
 ・ 困難に遭遇しても泰然自若とせよ
 ・ 会計人の身辺は清潔でなければならない
 ・ 指導者の四つの条件
 ・ 同業会計人の弱点を観察せよ
 ・ 事務所のイメージを採点しよう
 ・ 自分のあり方、生きざまを徹底吟味すべし
 ・ 一級会計事務所の所長は業務の第一線には出ない
 ・ 一円の嘘もない生き方を貫く
 ・ 頭たらんと思う者は僕となれ
 ・ 下坐業を実践せよ
 (2)事務所経営の基本
 ・ 事務所の規範体系を確立せよ
 ・ 経営方針は文書化すべし
 ・ 方針書は会計事務所の最高規範なり
 ・ 所長代理業務基準書・主査業務基準書を制定せよ
 ・ 起票代行をやってはならない
 ・ 事務所存続を左右する四つの分岐点を知れ
 ・ 巡回監査を行わない事務所は消滅する
 ・ 一週二点改善のすすめ
 ・ 管理文書の重要性を知るべし
 ・ 褒賞懲罰委員会制度を創設せよ
 ・ 格差の原因は自己にあり

第2章 関与先指導・職員数育
 (1)関与先指導
 ・ 経営者の心にベルトをかけよ
 ・ 関与先の発展のために祈りをもって全力投球せよ
 ・ あなたは関与先経営者を断固叱れるか
 ・ 経営者の心の指導ができねばならない
 ・ 関与先の全部が己れだとの実感を持て
 ・ あなたは関与先から感謝されているか
 ・ 関与先に絶対的な安心感を与えよ
 ・ 大口のスポット報酬を求めてはならない
 ・ 何故関与先は会計人を替えるのか
 ・ 関与先に疎外感を抱かせてはならない
 ・ 関与先との良好な関係を維持する方法
 ・ 関与先に与えるイメージに注意せよ
 ・ 業務外の依頼は円滑に回避する
 ・ 関与先への対応に関するルールをつくれ
 ・ 関与先拡大の着眼点
 ・ 関与先は最大の拡大ルートとなる
 ・ 事務所のイメージが拡大に影響する
 ・ 不良関与先は解約もやむなし
 (2)職員教育の方法
 ・ 職員が忠誠心を抱き得る環境を整えよ
 ・ 職員は利己心の道具ではない
 ・ 職員は所長を映す鏡である
 ・ 職員のための自己点検十七ヵ条
 ・ 職員の「潜在的成長力」を誘導せよ
 ・ 職員定着の条件を知るべし
 ・ 職員指導の三つのポイント
 ・ 「担雪埋井」を実践せよ
 ・ 職員の成長を心から祈る
 ・ 職員のレベルアップは徐々に行うべし
 ・ 幹部職員練成上の最大難問を知れ
 ・ 幹部職員の心のあり方に着眼せよ
 ・ 心中に「信」を持つべし
 ・ 保険指導の八原則

第3章 巡回監査・書面添付推進
 (1)巡回監査
 ・ 巡回監査をやらない会計人はプロではない
 ・ 毎月の巡回監査をキチッとやっているか
 ・ 巡回監査は監査であって照合ではない
 ・ 監査チェックリストを活用せよ
 ・ チェックリストは業務水準向上の武器
 ・ 税理士は「全部監査」を要求されている
 ・ AICPAの行動基準書と巡回監査
 ・ 起票代行を絶滅せよ
 (2)書面添付の実践
 ・ 金種別現金残高を記載させよ
 ・ 「書類範囲証明書」を徴求せよ
 ・ 「書類範囲証明書」の効能を知るべし
 ・ 「完全性宣言書」を徴求せよ
 ・ 「完全性宣言書」を徴求し、恐れず書面添付を
 ・ 確信をもって書面添付推進体制へ
 ・ 申告是認を受けられる事務所体制を構築せよ
 ・ 書面添付推進活動の目的を正しく認識すべし
 ・ 国家・社会から尊敬される会計人になろう
 ・ 書面添付の意義を知るべし
 ・ 書面添付准進のための所内体制
 ・ 事務所の法的防衛を忘れるべからず
 ・ 不実行の言い訳はやめよ

第4章 コンピュータの徹底活用
 ・ コンピュータによる合理化の四段階
 ・ コンピュータ会計成功の鍵は会計人の見識にあり
 ・ 入力データの良質性を確保せよ
 ・ コンピュータ会計に失敗する理由
 ・ コンピュータへの対応策を明確にせよ
 ・ コンピュータ武装の真の目的を知るべし
 ・ コンピュータによる改革を断固実践せよ
 ・ コンピュータによる脱税防止の法規を望む
 ・ データの遡及修正と「真正の事実」
 ・ コンピュータによる財務計算に法的規制を
 ・ 「データ処理実績証明書」を添付すべし
 ・ このままでは会計事務所は没落する
 ・ 見ない人には実在しない運命の岐路
 ・ 会計人よ、指導者たれ
 ・ 所内会議で意思一致を
 ・ 未来計算のモデル像を提供せよ

第5章 職業会計人の理想像
 ・ 会計人としての理想像を確立せよ
 ・ 税理士の活路は租税正義の護持にある
 ・ 会計人の社会的地位の向上に尽力すべし
 ・ 職業会計人にとっての自由を考察せよ
 ・ 勝ち抜く者の条件
 ・ 税理士は紛れもなく職業会計人である
 ・ このままでは税理士は無用の長物と化す
 ・ 会計人の及び腰を嘆く
 ・ 職業会計人は信頼され、尊敬されなければならない
 ・ 職業会計人の生き残る道
 ・ 職業会計人は国の宝である
 ・ 会計人の独立性を断固貫くべし
 ・ 「独立性」の意義
 ・ 「独立性」の具体的内容
 ・ 「独立性」の具体例①
 ・ 「独立性」の具体例②
 ・ 成功する職業会計人の条件①
 ・ 成功する職業会計人の条件②
 ・ 成功する職業会計人の条件③
 ・ 成功する職業会計人の条件④
 ・ 成功する職業会計人の条件⑤
 ・ 成功する職業会計人の条件⑥
 ・ アメリカの職業会計人の水準
 ・ 米国の会計人と日本の会計人の違い
 ・ 米国会計事務所の正当業務
 ・ 米・英の会計人の署名の重みを知るべし
 ・ アメリカ公認会計士協会の会務運営に学べ
 ・ 何故会計人集団が必要なのか

第6章 法制度への提言
 ・ 法制にもっと公正さを
 ・ 虚偽申告の経営者への刑罰法規が必要
 ・ 社会形成の原動力たる法の機能に目醒めよう
 ・ 税理士法人制度の創設は世界の趨勢
 ・ 租税法律主義の上位概念
 ・ 租税法律主義の本質を知るべし
 ・ 訴訟多発時代への対応
 ・ 類推解釈の禁止
 ・ 固定資産の評価法を時価主義にせよ
 ・ 租税回避と脱税の違いを知ろう
 ・ 会社の未来予測表示の法制化は世界の常識
 ・ 脱税に関する海外の文献
 ・ 脱税の時効期間の短さが元凶

第7章 自己研鑽と自己探求
 ・ 自利とは利他をいう
 ・ 演説の極意は「不動心」にあり
 ・ 問題発見能力を身につける
 ・ 問題発見能力と解決能力を磨け
 ・ 書物は批判的に読むべし
 ・ 一度に二つ以上のことを考えてはならない
 ・ その鳥を狙うな
 ・ 顧客に喜ばれる経営に徹せよ
 ・ 会計人は自己主張能力を磨け
 ・ エゴイズムを中核原理としてはならない
 ・ 自分の手で迷いを取り去るべし
 ・ 「自己限定」が発展を阻むと知れ
 ・ 直観力はエゴの克服によって培養される
 ・ 会計人は洞察力を持て
 ・ 利己中心の生活を送るほど、人生は長くない
 ・ 自己過信と自信喪失は同じ錯覚から生じる
 ・ 創造的衝動に従った生き方をせよ
 ・ 理解と行動を一致させる
 ・ 「主人公」を確証せよ
 ・ 意識慣習から脱却すべし
 ・ 二念を継がない
 ・ 瞑想を実践すべし
 ・ 「無心」を探求せよ
 ・ 一念不生なれば心肝を徹見す
 ・ 最大の敵はエゴの観念である①
 ・ 最大の敵はエゴの観念である②
 ・ 最大の敵はエゴの観念である③
 ・ 最大の敵はエゴの観念である④
 ・ 「誤解」の本体を見極めよ
 ・ 他力本願の本質
 ・ 恐怖心のもと(利己心)を払拭すべし


(はじめに)

 戦後の混乱期(昭和21年4月)、栃木県鹿沼町に会計事務所を開業した飯塚毅先生は、開業に当たって「法令に基づく租税正義を綿密に実現してゆく」ことを掲げ、そのためには「中立・厳正・独立」の姿勢を堅持してゆかねばならぬと決意し、事務所経営の基本理念を制定、これに則った経営管理文書等により職員の教育、関与先指導に当たってきました。
 世界的に有名なモンゴメリーは『監査論』の中で、成功する会計人の条件として、次の6項目を挙げています。①正直であること、②客観的視点に立てること、③成長力を持っていること、④分析能力を持つこと、⑤理論編成能力と解説能力を持つこと、⑥確信の培養・説得力・鋭い事業感覚を持つこと。
 飯塚毅会計事務所は、これらの条件を軽々と超えて拡大発展を続けました。
 昭和38年6月には、国税当局による事務所への大弾圧(いわゆる飯塚事件)が勃発しましたが、無事これを乗り切りました。
 こうした中で飯塚毅先生は、昭和41年に(株)TKCを設立。昭和44年からは、『電算機利用による会計事務所の合理化』をテキストに全国を行脚し、電算化による合理化を通じた申告是認体制の構築を多くの職業会計人に呼びかけました。そして昭和46年、「租税正義の実現」を高く掲げた飯塚先生の主張に共鳴した会計人によってTKC全国会が結成されました。
 以来、飯塚先生はTKC全国会会長として、TKC会報等に職業会計人の行動指針を論じた数多くの論文等を発表してこられました。その内容は、職業会計人のあり方を、職業倫理、職業法規等の観点から原理的に論じており、他に類をみない日本の職業会計人の実践的行動規範ともいうべき内容となっております。
 本書はそれらの諸論文の中から事務所経営に関係する部分を抽出して、各一頁を基本に編集したものです(出典は巻末記載)。日本の職業会計人の行動指針・行動規範を示す必読書(原典)として、全ての会計人の座右に置かれ、永く読み継がれることを願って刊行するものです。
 最後に本書は、TKC会報編集長寺田昭男先生が、飯塚毅先生に以上の企画趣旨を提案され、了解を得た上で発刊の運びとなったことを付記いたします。

平成9年10月吉日
(株)TKC出版社長 髙橋貞夫

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