一職業会計人の悩み(著作集Ⅳ)

 飯塚 毅 著
(目次)

第1章 租税正義とは何なのだろうか
 税理士の消滅と、公認会計士との一本化の問題
 レーガンの税法改革案の背景にあるもの
 税法学の特殊性に関する理解不足の危険
 税理士の泣きどころ・再論
 有権解釈規定の絶望的な欠落を嘆く
 実質課税の解釈方法を明文化して頂きたい
 なぜ平等原則を貫けぬ
 正義とは何なのだろうか

第2章 もう税理士法は改正すべきだ
 法の変動期における私見の介入支配
 日本の税理士の代理権と独立性
 税法の解釈適用の限界認識の必要性
 商法改正試案の悲惨
 政府および国会はいつまで怠慢を続けるのですか
 実質課税の原則
 続・実質課税の原則
 もう税理士法は改正すべきだ

第3章 商法はもっと会計学に踏み込め
 商法改正上の若干の障害について
 彼らは法律を知らない
 商法はもっと会計学に踏み込め
 もっと会計に法律を
 イギリスの最新会社法管見
 新アメリカ内国歳入法の罰則(1)
 新アメリカ内国歳入法の罰則(2)

第4章 公正妥当な会計処理基準
 日米で相違する一般に公正妥当な会計処理基準
 一般に認められている会計処理基準(再論)
 商法改正と税理士会の選択の焦点
 商法改正と税理士会の選択の焦点(再論)
 国会議員先生、もっと頑張ってぇ
 大蔵省政府委員の発言を惜しむ
 消費税法雑感
 類推解釈禁止の原則について
 増差税額の徴収猶予について

第5章 会計事務所40年
 会計事務所40年
 脱税防止の問題
 TKCの上場、方針転換?
 一流会計人の証とTKC
 一隅を照らす国宝なりや
 誤解と錯覚を排した人生を
 会計法人・税理士法人設立の問題
 謬論の横行を戒める

第6章 政府・自民党等への意見陳述
 税法等の執行と策案に当たる大蔵省幹部への要請書(60.9.25)
 政府税制調査会への御進講要録(60.11.29)
 第3次商法改正の要点メモ(61.2.7)
 税制の抜本改革に関する提言(61.11.19)
 売上税の導入に賛成意見を表明-衆議院予算委員会公述原稿
 衆議院予算委員会公聴会・質疑応答録(62.3.20)
 政府税制調査会における陳述意見(62.12.9)
 自民党税調への意見陳述書(63.4.13)
 衆議院税制問題等に関する調査特別委員会への意見陳述(63.11.8)

第7章 職業会計人のイデアールディプスを求めて
 第3次商法改正と会計人制度改革の焦点
 (第2回TKC全国役員懇話会講演より)
 経営環境の激動期にあたって経営者の最高の生きざまは何か
 (第3回TKC全国役員懇話会講演より)
 TKC会計人の原点
 (第4回TKC全国役員懇話会講演より)
 正しいものを信じて生きる
 (TKC中部会座談会)
 21世紀を拓く-職業会計人の理想像(イデアールティプス)を求めて-
 (TKC全国会15周年記念大会講演より)
 TKC全国会15周年記念大会・挨拶

第8章 日・独法制に於ける「正規の簿記の諸原則」研究の論文内容要旨
 日・独法制に於ける「正規の簿記の諸原則」研究の論文内容要旨
 法学博士学位記取得祝賀会 祝辞・謝辞


(はじめに)

 私の会計事務所の開設は、昭和21年の4月1日ですから、今年でちょうど、満43年になります。開業の前には、私は、会社や官庁に勤務したことがありません。従って、私の職業会計人生活は、全くの暗中模索状態で出発したわけです。
 顔も経歴も、用をなさず、ものをいわない、となりますと、頼りになるのは、健康と学力だけ、と思いがちですが、実はその他に、情熱と正義感と誠意と国家国民の前途を憂える心とがあります。そして、もっと根源的なものとしては、人生哲学があります。この人生を、いかに生きてゆくかの原理です。
 まず健康ですが、学生時代は病気の卸問屋でした。次から次へと病気ばかり。一番悲しかったのは、大学後半期の後頭部神経痛でした。青年時代に同じ病気で苦しんだイギリスのジスレリーの伝記は、私には、深い慰めでした。開業後のことですが、阪大医学部の塩澤教授が書かれた『血液酸塩基平衡学説』という書物を拝読して、良質カルシウムの大量服用が、いかに健康 保持に決定的役割を果たすかを学びました。わが生涯の師である雲 巌寺の植木義雄老師が、死の数日前まで、カルシウムとビタミンBの粉末を、徹底して飲み続けていた事実を想起し、自分の絶対の生活条件としました。これで助かりました。
 次に学問ですが、英米独の専門書が中心。これは貪るように吸収。残念ながら、才能と素質とに恵まれませんでしたので、努力で補うこととしました。気がついたら、各国の文献は、軽く2万冊を突破。いまでも、毎月到来する海外文献は、100冊を越えますから、この調子だと、相当な分量になると思います。
 昭和37年の暮に、恩師の勝本正晃先生から、突然に、博士論文を書くようにいわれましたが、飯塚事件やTKCの設立等があって遅れに遅れ、やっと昭和58年(1983年)7月に、森山書店から『正規の簿記の諸原則』を出版し、翌59年5月には、TKC全国会最高顧問の黒澤清先生の手引きで、日本会計研究学会の学会賞たる太田賞を頂き、同年末には、その独訳本が、私の親友ハインツ・セービガー博士(Dr.Heinz Sebiger)の手引きで「日本とドイツ連邦共和国における正規の簿記の諸原則」との題名で、しかも前例がないそうですが、「ドイツ税法学会の論文」との銘を入れられてベック社から出版され、その英 文版は、1987年2月27日付で、アメリカ合衆国カリフォルニア州のケンシントン大学から、米国の大学の最高の学位である Ph.D.(Doctor of Philosophy)を頂き、続いて昭和63年(1988年)3月には、中央大学から法学博士の学位を頂いたのでした。
 前置きが長くなりましたが、本書は、TKC会報の巻頭論文として執筆したものが中心です。学ぶほどに、研究するほどに、日本の租税法等の欠陥が目につき、それを一職業会計人の悩みとして、総括したものです。
 御笑覧を賜わり、御叱正を頂ければ、幸甚に存じます。

平成元年6月  筆者

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