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1TKC全国会会長 坂本孝司発刊に寄せて  わが国の中小企業は、日本経済の屋台骨を支える存在です。企業数の99%以上を占め、雇用の約7割を担う中小企業の健全な発展なくして、日本の未来は語れません。しかし現実には、円安や物価高の継続、構造的な人手不足、金利の上昇など多くの困難に直面しています。このような状況下で、多くの中小企業の顧問を務める私たち税理士に求められるのは、単なる税務代理を超えた「経営の伴走者」としての役割です。 この使命を制度的に裏づけているのが、「認定経営革新等支援機関制度」であり、その中核となるミッションは資金調達力・財務経営力の強化にあります。平成24年に中小企業経営力強化支援法に基づき創設された同制度は、国が税理士や金融機関を認定し、企業の経営改善・資金調達を支援する仕組みです。特例事業承継税制、経営改善計画策定支援事業(405事業)・早期経営改善計画策定支援など、認定支援機関にしか支援できない制度も用意されてきました。現在、全国で約3万7千の認定支援機関が存在し、うち約2万4千が税理士・税理士法人で占められており、「制度の中核を担うのは税理士である」ことが明らかです。 税理士は日々の適時・正確な会計帳簿作成を指導し、「中小企業の会計に関する基本要領(中小会計要領)」やそのチェックリストを活用して、決算書の信頼性を高めることを重視しながら、巡回監査を通じて企業の月次決算体制の構築を支援しています。その結果、中小企業にとっての主要な利害関係者である金融機関に対し、信頼性の高い決算書を保証する役割を担っています。とりわけ、「情報の非対称性」を解消することは円滑な金融の大前提です。税理士が認定支援機関として金融機関と協働すれば、決算報告会やモニタリングを通じて中小企業の透明性を高め、融資環境の改善にもつながります。

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