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2「昔は良かった」症候群5老舗企業といわれる会社の業績不振や倒産が目立つようになりました。経営者から相談を受けるときにお話をうかがうわけですが、その際に、「昔は良かった」と述懐する経営者でその後(心を入れ替えれば別ですが)良くなった例を知りません。「昔」とは一般的に、高度経済成長時代やその後に続く成長期のことを指していることが多いようです。確かに、高度経済成長時代は人口も増加し、その人口が首都圏等に集中しました。その結果、住宅や食料、衣料など生活に必要な商品の需要が増大し、供給すればするほど売れていく時代でした。また、地方でも税金の配分システムである地方交付税や補助金等によって手厚く保護され、公共事業等によって地方の建設業を中心に潤っていたのでした。また、社員も、インフレと企業業績の向上によって毎年給料の増加が予測でき、その安心感から生涯設計ができたのです。技術等を身に付け果敢に独立を果たし、その企業を成長軌道に乗せた人も多かったのです。ところが、平成に入りバブル経済の崩壊とともに、信用の礎であり戦後の企業成長のための資金を供給し続けた金融機関が倒産するなど、金融収縮が進み、企業に安定的な資金が供給されにくくなりました。この結果、企業の成長が止まり、さらには倒産が多発するなど大不況を経験することになったのです。大企業でもコスト削減の一環から、日本的雇用慣行である終身雇用さえも放棄せざるを得なくなりました。入社すれば一生安泰とされた大企業の社員にも「リストラ」と称する解雇の嵐が吹き荒れ、新人採用も抑制され、さらには派遣社員等の低賃金労働力で代替するようになったのです。この結果、消費者も生活を守るために消費を抑制し、また、単価の安いものを選択するようになりました。この結果、国内総生産の約60%を占める個人

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