i日本経済はデフレ脱却の兆しが見え始め、全体として令和6年の賃上げ率は33年ぶりの高水準となったほか、企業収益や設備投資額も過去最大規模を記録しています。しかし、細部を見渡せば産業や地域によって状況が異なることもあり、「賃金と物価の好循環」を安定させるにはさらなる生産性向上が不可欠です。また、少子高齢化や人口減少に対応し、年齢や働き方に中立で、負担能力等を踏まえた公平な税制の構築が求められています。こうした現状の下、令和7年度税制改正では「賃上げと投資が牽引する成長型経済」への移行と発展を最重点テーマとし、以下の点が見直されています。まず、大企業を中心に企業が国内設備投資や賃上げに積極的に取り組むよう、メリハリある法人税体系の構築が図られました。また、地域の活力なくして日本全体の活性化はないとの考え方から、新たな地方創生施策(「地方創生2.0」)の展開に沿って、税制面での地方創生や活力ある地域経済の実現に向けた取組が取り入れられました。具体的には、中小企業税制について、売上高100億円超を目指す成長意欲の高い中小企業の設備投資に対して、さらなる税制上の措置が講じられています。次に、物価上昇における税負担調整の観点から、所得税の基礎控除が見直されています。具体的には、憲法で定める生存権に基づき引き上げるべきとの野党からの主張をもとに、生活保護基準や最低賃金の水準等を考慮し、年収200万円以下の所得層の税負担を軽減するため課税最低限が所得金額160万円に引き上げられました。あわせて、就業調整対策の観点から、大学生・専門学校生年代の子等に係る新たな控除として「特定親族特別控除」が創設されています。大学生・専門学生年代の子等の合計所得金額が85万円(給与収入で150万円)までは、親等が特定扶養控除と同額(最大63万円)の所得控除が受けられ、控除額が段階的に逓減されます。さらに、「資産運用立国」の実現に向けてNISAのさらなる利便性はじめに
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