の心に果たして正しくベルトが掛かっているかどうか、会計処理に網羅性、真実性、実在性があるかどうかを確かめ、ときには厳然として警告を発すること、が絶対の条件となります。これが巡回監査です。 つまり「巡回監査」とは、職業会計人本人又はその従業員が、毎月1回以上にわたって、関与先を訪問して、その会計処理を実施している現場で、会計に関する真実性を確証し、過ちがあればこれを訂正させてくることを意味しています。(5)この「巡回監査」によって、税理士業務を行う職業会計人は、「相当の注意義務」(6)を果たし、「真正の事実」を確保することができることとなるわけです。巡回監査の不実施は、イコール、会計資料の不備不正を承知の上で、税理士業を営むことを意味し、明らかに専門家としての義務(税理士法第45条第2項)に抵触して違法だということです。(7) 換言すれば、税理士法第45条は、税理士に「真正の事実」に基づく業務処理を求めており、その手段として「巡回監査」を要請しているといえるでしょう。翻って、日本ではなぜ巡回監査が必要なのか 以上のように理解してくると、真正の事実とは「真実の正しい事実だ」となる。そうなると税理士は、顧客から提供された生の資料のうち、違法不正の資料部分が見つかったときは、これを訂正させ正しい資料に直させて、その上で税法上の処理を行う義務がある、ということになる。それは伝票や証憑書の1枚1枚を巡回監査によって検証してみなければ分からない。わが商法にはドイツ商法第257条のような、証拠の存在を記帳の絶対的条件とする条文はない。ドイツでは「証拠なければ記帳なし」(Keine Buchung ohne Beleg.)は、正規の簿記の諸原則の一部だと法律で定められている(同条第1項第4号参照)。このわが国法制の欠陥をどう克服するかで、TKCは「証第 号」の印と支払証明書用紙を大量に作って会員の利用に供しているのである。たった1枚の脱税伝票を見過ごしていたばっかりに、税理士資格を棒に振った元国税庁の幹部がいたではないか。税理士の業務は試査は許されていない。全部監査を要求されているのである。ここが公認会計士業務と税理士業務との決定的相違点なのである。(8)126
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