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 では、その真正の事実は、どのような場合に担保されるのでしょうか。担保される条件として飯塚毅初代会長は次のように述べています。 私は、その条件には少なくとも次の3つがあると考えます。第1条件は、企業の内部統制制度が完全に整備されていること。第2条件は、企業の会計事務担当者が、税務に関する会計処理について、高度の専門的知識を持っていること。第3条件は、企業の経営者やその他の幹部が、会計経理について、絶対に不正を行わないぞ、との強固な決意を有すること、以上です。すべての関与先企業に、以上の3条件が具備されている場合には、巡回監査は、まず、必要あるまい、と考えます。では、そういう3つの条件を、完全に近く具備している企業は、どの位あると考えますか。私の36年間の会計人生活の経験から申しますと、まず殆ほとんど1%もない、と結論づけられます。(2) したがって、税理士はすべての関与先に対し、「真正の事実」に基づく業務を行うため、巡回監査をしなければならないわけです。 また、商取引に関する証憑書類や契約書などの原始記録を最初に見るのは、経営者又はその従業員であって、顧問税理士ではありません。つまり職業会計人は、常に会計資料を後で見せられる立場にあるのです。(3)その上、日本では、旧破産法第374条、第375条に規定されていた場合を除いて、不完全記帳、不実記帳に対する刑罰規定をもっていません。(4)つまり完全な記帳を強制する法律がないということです。したがって、もし関与先に出向かなかった場合には、会計資料の真実性がその量と質との両面から、納税者側の故意、錯誤または過失によって、減殺されてしまう危険があるということです。 こういう諸困難の中で、税理士はどのようにして、自己の法的責任である「真正の事実」に準拠する業務ができるでしょうか。 第1は、企業経営者の心に常にベルトを引っ掛けて、彼らを不正経理に走らせない工夫をこらすこと。 第2は、関与先企業の現場に出かけて行って、会計処理の網羅性、真実性、実在性を確証してくること、以上です。 そのためには、少なくとも月の内に1回以上は、関与先を訪問して、経営者125

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