はっきりいえる点です。そして特に1985年のイギリス会社法や、同じく1985年の西ドイツの会計指令法(Bilanzrichtlinien-Gesetz)を見て痛感することですが、今や西欧諸国の商法又は会社法には、驚くほど会計関係規定が多くなっている、ということです。日本経済は現在世界のトップ水準にきていますが、それは商品生産の領域だけのことで、人文科学の領域では、みじめなものがあるのです。 日本の職業会計人の現状をみて痛感する第二点は、職業会計人の絶対数が余りにも少ない、という点です。アメリカの会計士の数は、C.P.A.だけで30万人を越えていますが、日本のC.P.A.は8,200人になったばかりです。因みに、アメリカの弁護士数は60万人を越えていますが、日本では15,000人弱です。絶対数の少なさは、その業界内部のエネルギーの少なさを意味しています。活力が小さい、ということです。それは日本の弁護士や公認会計士或あるいは税理士を生みだす国家の仕組みのどこかに、誤りがあることを推測させるものがあります。全く困ったことです。できるだけ早めに、この現状は是正する必要があります。誰かがこれを是正するために立ち上ってくれる必要があるということです。 以上のように、日本の職業会計人を取りまく環境には、数多くの欠陥がありますが、会計人の業務の品質水準に限って云えば、これは悲しみに堪えないほど低いといえます。英米仏の会計人業務は、例えば決算報告書や申告書は、100%の申告是認が当り前だ、という認識が一般化しています。日本は、そうなっていません。その原因は、前述した通り法律の不整備さにもよりますが、もう一方日本の税理士制度のあり方にも問題があります。 日本では、税理士の資格を授与されると、懲戒処分を受けたり、資格を返還しない限り、一生保障されることになっており、この現行制度に税理士はあまえていないか…。 欧米では厳格な研修制度が整備され、これが社会的担保となっていることから見ても、日本会計人制度に一考を要すると考えます。 われわれは、法の求める使命の本質を真正面から受け止めて、職業会計人として、官側が調査を省略せざるを得ないような権威ある立派な決算書・申告書を作ることを、この愛する祖国で定着させようとする断固たる姿勢を堅持しなければなりません。(11)12
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