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先が、国家的規模をもつ大会計事務所に相当な速度で吸収されている、ということであった。 第1の点については、協会はワシントンの議会に陳情し、銀行による財務計算の受託を禁止する立法処理をとってもらおうとしたが、憲法上の営業の自由を根拠として、議会からは断わられた、という。2つめの点については、規模の大小を問わず、アメリカの公認会計士事務所の業務が均質性をもっているという点を、全米銀行協会の15,000の全会員に周知させる必要があるから、協会の倫理綱領(The Institute’s Code of Ethics)と全会計事務所の所在地図一覧とを送達し、併せて、別途の施策として職業会計人の生涯教育に努力を集中して行く、ということであった。 この2点は、懇談中に感受した、重点課題であった。この日、懇談後に、私はニューヨーク市内の書店を廻って、200冊ばかりのコンピュータ関係の参考書を注文した。プラザ・ホテルに戻ってから、この2点について熟考する機会をもった。さあどうする、と自分に向かって問い詰めてみた。結論はこうだった。アメリカのこの動きは、必ず遠からず日本に影響してくるに違いない。銀行による顧問先の収奪から、会計事務所を防衛しなければならない。最も効果的な会計事務所の防衛策は、私が自ら計算センターを創ってしまうことだろう。先端的な日本の職業会計人は、先を争うように、自ら計算センターを作ろうとするだろう。北海道から沖縄まで、続々と計算センターが創られてゆくだろう。だが、日本の職業会計人は、先端的であればあるほど、内心に秘められた利己心の追求という呪じゅばく縛からは脱却できない。開業以来20年間の私の観察によれば、日本の多くの会計人は哲学を勉強しようとしていない。従って、『自利とは利他をいう』、と喝かっ破ぱした日本天台宗の開祖最さい澄ちょう伝教大師の、人間の生き方に関する、ギリギリの哲理については、理解が届いていない。 また、日本の職業会計人を取り巻く法律的環境は、一言にして言えば貧困そのものである。税法然り、会計法規然り、である。それは一体、何に起因しているのか。憲法上、国会は国の唯一の立法機関である、とされているが(41条)、その国会を構成する国会議員諸公は、その本来的な任務である法案作成を避け、立法事務の殆どを官僚に依存している。その官僚は、栄達と保身とが中心的な内心の衝動核である結果、立法事務については、先見的自発性と積極性とに欠けてしまう。従って、放置しておけば、日本の法律は、先進文明国の中では、常時劣位に立ってしまう運命にある。例えば、ドイツには既に『戦争法』3

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