企業再生戦略

 企業再建コンサルタント 川野 雅之 著
(著者)

川野雅之(かわの まさゆき)
 有限会社川野コンサルティング代表取締役。企業再建コンサルタント。
 東京商工会議所経営安定特別相談室専門スタッフ、滋賀県商工会連合会倒産防止特別相談事業専門スタッフ、社団法人日本観光旅館連盟企業再建問題専門委員、LLPほっかいどう事業再生支援センター顧問等を務める。
 法律事務所において、実務担当者として数多くの倒産関連業務に携わる。平成13年4月に独立し、有限会社川野コンサルティングを設立。現在は、弁護士や税理士などの職業専門家や金融機関、また企業経営者をクライアントに、中小企業の再建・再生に向けたコンサルティングを行っている。特に経営者個人の救済を最優先課題とするスキームを提案し、完遂までサポートしている。

〔著書〕
『会社再生 そのとき社長は何を決断したらよいのか』(H&I)
『しくみと実務がわかる 倒産のすべて』(日本実業出版社)
『“長期的な視点”で見る中小企業再生完全マニュアル』(TKC出版)
『過剰債務に負けない中小企業再生の智恵』(TKC出版)
『中小企業再生のターニングポイントはここだ!』(中央経済社)等の著書・共著
『その時どうする!倒産時守られる財産 守られない財産』(FPステーション)
『中小企業でも債権放棄が得られる再生手法』(TKC出版)
『土壇場!銀行交渉術』(東峰書房)
『あの取引先は大丈夫か?売掛金死守にはここを見よ!』(レガシィ)
『不良債権処理のしくみと過大な債務を抱えた企業の救済策』(TKC出版)等のビデオ・DVDがある。

有限会社川野コンサルティング http://www.kawacon.com/
(目次)

第1章 経営者に求められる「5つの資質」
 1 人に好かれる『性格』か?
 2 『発想の転換』が求められている!
  コラム1 『発想の転換』の弊害になるのは経営者のマイナス思考!
 3 『行動力』が活路を開く!
  コラム2 再生は数字よりも先に態度や行動で判断される!
 4 『腹をくくれる人』か?
 5 『やる気』を誤解してはいけない!
  コラム3 リストラが“負のスパイラル”を招く!
 
第2章 事業の将来性
 1 今のビジネスに将来性はあるのか?
 2 キーワードは『話題性』
  コラム4 話題性は自分で作る!
  コラム5 高齢者ビジネスに将来性はあるのか?
  コラム6 再生のためには外部の意見を聞いてはいけない!?
 
第3章 資金繰りの重要性
 1 倒産の原因は資金繰りの破綻
 2 資金繰りの誤解
 3 再生の基本は無借金経営
 4 再生スキームも資金繰りによって変わる
 
第4章 必要不可欠な「取引先の支援」
 1 取引先の支援がなければ再生はできない!
  コラム7 取引先の支援で再生を果たした内装工事業者のケース
 2 取引先への支援の打診は早く行うことが大切!
 
第5章 再生スキームは「貸借対照表」で判断
 1 4パターンに分類される再生スキーム
 2 「私的手続き」と「法的手続き」の判断基準
  コラム8 再生は金融機関によって命運がわかれる
 3 現法人のまま継続する場合と第二会社方式を採る場合の判断基準
 4 スポンサーがいる場合は法的手続きがベター
 5 手続きの順番も事案ごとに検証する
 
第6章 金融機関の支援
 1 再生のキーマンとなる金融機関
 2 再生の可能性は“金融機関がどこか?”で判断する
 3 再生会社に対する融資
 
第7章 再生の原動力となる従業員の協力
 1 再生の原動力は従業員
 2 カリスマ性の誤解
  コラム9 経営者の意識改革で再生した食品スーパー
 3 最後は「この人のために頑張ろう!」と思われるかどうか
 4 「家を守る」という発想の弊害
 
第8章 中小企業が考えておくべきこと
 1 中小企業金融円滑化法の対応
 2 円滑化法は借入金の返済を先延ばしにしているだけ
  コラム10 企業再生とは誰のために行うのか?
 3 融資の考え方
 4 借りたくても借りられなくなる!?
  コラム11 円滑化法は保証協会への代位弁済を止める目的がある!?
  コラム12 国債を発行しているのは金融機関を救済するため!?
 
第9章 再生の局面での経営者のけじめ
 1 自宅の売却
 2 退陣
 3 株主責任
  コラム13 「俺がいないとこの会社はダメだ」の誤解
 4 実務面での“けじめ”
 
第10章 再生に向けた取組みの必要性
 1 金融機関の「考え方」を変えるには?
 2 連帯保証債務の解決法
 3 再生案件をなくす仕組み作り


(はじめに)

 『経営者から企業再生の相談を受けた時、その会社のどこを見て再生の可否を判断するのですか?』これは筆者が最も多く受ける質問です。
 その答えは当然、多岐にわたります。厳しい経営状態にある企業というのは、人間にたとえると、“合併症”を併発している患者のようなものです。1つの病気を治療しても健康な状態にすることはできないからです。時間をかけて、1つひとつの病気をしっかり治していかなければなりません。
 とはいっても、経営者との初回の相談時間はせいぜい1時間程度です。この限られた時間内で次のことを行わなければなりません。

経営不振に陥った“核心”部分の原因究明
   ▼
復活に向けたプランのヒアリング
   ▼
外部環境を勘案した実現可能性の検証
   ▼
再生の可能性を判断
   ▼
再生プランの策定、急場を乗り切る具体的なアドバイス
ソフトランディングに向けたシナリオのアドバイス

 この時、重要なのは、「経営者本人(ケースによっては後継者も)と直接面談すること」です。決算書などの財務諸表を見ただけでは、経営不振に陥った“本当の原因”がわからないからです。

 再生プランについても、「この部門は不採算だから撤退する」「この部門は儲かっているからさらに力を入れて取り組む」「この数値は業界平均に比べて高いから○○%まで下げる」などのありきたりの結論しか導き出すことができません。
 企業を動かしているのは人です。端的にいえば経営者です。つまり、経営者と直接会って、会話をすることで、初めて次のようなことが見えてくるものです。

財務諸表等の数値の異常は経営者の
考え方や行動に原因がある。
しかも、ほとんどの経営者はそれを自覚していない。
   ▼
ディスカッションの中で
経営不振に陥った“核心”が見えてくる!
   ▼
復活のカギは過去の分析よりも
『今から何をするか』が重要!
   ▼
経営者の考え方、言葉や目の強さ、意思などを直接、
見聞きせずに企業再生の可否は判断できない!


 データに基づくスコアリングモデルで、金融機関が多額の不良債権を抱えた事実を忘れてはいけません。
 本書は、企業再生を専門とする立場から、企業のどこを見て再生の可否を判断しているのかを、“私見的に”まとめたものです。金融機関やアドバイザーの方には第三者の目線で、また経営者の方には自問的に捉えていただければ、難局を打開する1つのヒントになるかもしれません。
今、日本は以下のような様々な問題を抱えています。

・東日本大震災による直接・間接的な打撃
・少子高齢化による市場規模の縮小
・大企業の海外進出による経済の空洞化
・インバウンド頼りのひ弱な経済復興策
・雇用者数の減少
・失業保険や生活保護費の増大
・自殺者数の高止まり
・犯罪の増加  等々…

 1つの企業の経営破綻は、上記のような「負の連鎖」をさらに招くことになります。これ以上の不況や不幸な事件を引き起こさないように、本書がその一助となれば望外の喜びです。

 川野 雅之

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